ボルボの新車ラッシュは、やめられない止まらない!?

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今後もボルボは新車を出し続ける(しかない)

2017_ボルボV90

トップ画像はボルボの新型V90です。新型SUV・XC90が発売され、S90セダンの登場も控えているボルボですが、V90はそれらに続くステーションワゴンとなります。発表は2月18日、市場にはS90発売のおよそ3ヶ月後に投入される模様です。

ここ最近のボルボは、矢継ぎ早に新車を出しています。背景には生産技術の変化と、それに伴うボルボの新戦略がありそうです。

トップ画像の出典: carscoops.com


目次

  1. 外資に買収されて復活
  2. ボルボの狙い
  3. ボルボは独自性で勝負する
  4. ボルボは成功できるか?

外資に買収されて復活

中国の吉利(ジーリー)汽車に買収されたときには、誰もが「ボルボ終わったな」と感じたと思います。しかし見事復活し、今や完全にプレミアムブランドの仲間入りを果たしたかに見えます。

ジャガー・ランドローバーも、インドのタタ財閥に買収されてからというもの業績が好調です。日産の場合もルノーに買収されV字回復を遂げました。

転売目的ではないという条件付きならば、しがらみを断ち切ってくれる外資を積極的に受け入れるべきなのかもしれません。

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ボルボの狙い

モジュール化というトレンド

トヨタのTNGAやVWのMQBなど、自動車業界の生産システムは「モジュール化」がトレンドです。

自動車メーカーはモジュール化により、部品の共有化でコストを削減しつつ、モデルラインナップを拡大することができます。

ボルボは1.3兆円という巨額を投じて、Scalable Product Architecture(SPA)というモジュール化されたプラットフォームを導入しました。

しかしボルボは年間50万台弱しか生産していていない小規模メーカーです。しかも利益率が低いメーカー(2014年は売上高1.85兆円に対し、営業利益は320億円ほど)でもあります。

セグメント・ボディ形状ごとにプレミアムレンジを狙う

ボルボの新戦略を読み解く上で、参考になるのはBMWです。

BMWは2012年以降、ひたすらモデルラインナップを拡大してきました。2005年には24モデルだったBMWが、今や36モデル(注: 日本におけるラインナップ)を展開しています。2020年には60モデルまで拡大する予定だそうです。

BMWがラインナップを拡大できたのは、早くからモジュール化を進めてきたためです

セグメント・ボディ形状ごとに「BMW」を投入すれば、ピンポイントにセグメントごと・ボディ形状ごとのプレミアムレンジで、BMWのシェアを拡大することができます。

プレミアムレンジだけ押さえるやり方なら、利益率は下がりません。つまり安物は他社に作らせ、BMWは美味しいとこ取りする作戦です。ビュッフェで高級食材だけ食べる両津勘吉みたいなやり方ですね。

BMWの生産台数は、トヨタやVWの5分の1程度にすぎません。しかしBMWの純利益は、トヨタの3分の1もあります。

ボルボの戦略は、おそらくBMWと同様のものになると思われます。しかしそうなると、他のプレミアムブランドとのシェア争いは避けられません

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ボルボは独自性で勝負する

ボルボが他のプレミアムブランドと真正面から競争するのは、経営規模的にも分が悪いです。

そこでボルボは独自性を強く打ち出してきました。PHVを各車種のトップグレードに据えてきたのです。

独創的な「ツインエンジン」

ボルボのPHVは「ツインエンジン」と名付けられています。といってもエンジンが2つあるわけではありません。フロントにツインチャージャーのエンジンと小さなモーター/ジェネレーター、リアに大きなモーターを搭載しているだけです。

リアタイヤとエンジンは、機械的につながってません。新型プリウスの4WDと同じく、後輪はモーターのみで駆動されます。

エンジンとトランスミッションの間にある小さなモーターの出力は25psしかありませんが、前後輪のトルク差を吸収する調整役として重要な役割を担っています。

プリウスのように遊星ギヤ式のトランスミッションを使わずにモーターとエンジンを協調させるための手段が、「ツインチャージャー」と「小さなモーター」なのでしょう。

例えば停止状態から急加速するときには、リアの大きなモーターが発する大トルクに対し、フロントのトルクが不足します。低回転のときにはエンジンの発生トルクが小さいからです。

その領域を小さなモーターでカバーし、前輪を駆動させ車体を安定させる。スーパーチャージャーによる過給が始まったら、フロントの駆動を小さなモーターからバトンタッチする……というやり方で、4つのタイヤを制御しているのだと思います。

なぜボルボがこんな七面倒臭いシステムにしたかといえば、スポーティーさを演出したかったからに他なりません。プレミアムレンジでシェアを奪うには、速さが必要不可欠なのです。

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ボルボは成功できるか?

他のプレミアムブランドには無い切り口で、新車を次々と投入しているボルボですが、成功できるかは未知数です。

BMW的な「美味しいとこ取り」戦略は、絶対的な販売台数が少ないため、各セグメント・各ボディタイプにのプレミアムレンジを奪わなければ利益は出ません。しかしボルボのモジュール生産システムは、今のところ大型車にしか対応できていません。

Compact Module Architecture(CMA)と呼ばれる、SPAの小型車版も準備されているのですが、大型車と小型車で2種類のプラットフォームを用意するやり方では、コスト削減効果がどこまであるのか疑問です。

スバルのマーケティングの上手さ

スバルはプレミアムブランドではありませんが、利益率はポルシェ並みです。その秘密は、アメリカ市場に特化した商品ラインナップにあります。レヴォーグが日本に導入されたのも、アメリカナイズされていくラインナップを是正するためです。

利益率を高める手段は「高級化」のみではないことを、スバルは証明してくれています。市場や顧客に合わせて上手に消費者余剰を提供できれば、豪華な内装や過剰な性能は必要ないのです。

ボルボはもう引き返せない

ですがボルボはもう巨額の投資をしてしまいました。投資を回収するために、新車の投入を続けなくてはなりません。

ボルボが他のプレミアムブランドと泥沼のシェア争いを演じるか、それとも独自のポジションを獲得するのか、興味は尽きません。筆者としてはスバルのように節約しつつ上手くやるべきだったと思うのですが……。

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