タカタの危険なインフレータが今も新車に使われている!?

不正・不祥事,批評


インフレータ(ガス発生装置)の不具合により、全世界ですでに6000万台がリコール対象となっているタカタのエアバッグですが、その不良品を新車に装着している事実が発覚しました。

トップ画像の出典: jsae.or.jp


目次

  1. 不良品のエアバッグを使用しているメーカーとは?
  2. なぜ不良品のエアバッグを使い続けるのか?
  3. 代替品のインフレータは大丈夫なのか?

不良品のエアバッグを使用しているメーカーとは?

VWアウディフィアット・クライスラー、そして三菱自動車が、現在販売されている新車に不良品のエアバッグを使用しているそうです。

またトヨタは、2016年3月から2017年7月にかけて、不良品のエアバッグを組み付けた車を175,000台生産する予定だそうです。

違法じゃないの?

米国運輸省道路交通安全局(NHTSA)は、「不良品のエアバッグが装着されていても、インフレータが長期間に渡り高温多湿の環境下に置かれない限りは問題なく、短期的な安全性に支障はない」としています。つまりアメリカの行政も、不良品の使用を認めているのです。

自動車メーカーの責任

しかしアメリカ上院の商業・科学・交通委員会に所属するビル・ネルソン上院議員(民主党・フロリダ州選出)は、「問題は将来リコールする必要があると知らされずに、消費者が購入していることだ。欠陥エアバッグを装着している車は、修理が終わるまで販売すべきではない」とコメントしています。自動車メーカー側が説明責任を果たしていないということですね。

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なぜ不良品のエアバッグを使い続けるのか?

不良品のエアバッグを使っていることが発覚すれば、いくら短期的な安全性に問題がないと言っても、企業の評判に傷がつくことは避けられません。しかし交換部品が足りていないために、不良品といえども使わざるを得ないのです。

Newsweekによると、交換部品の生産はタカタの他に、ダイセル(日)、オートリブ(瑞)、ZF-TRW(米)が行っているそうですが、インフレータをタカタのエアバッグに合うように設計変更しなければならないため、生産が思うように進んでいないとのことです。

しかもエアバッグの形状は、新車開発時に車種ごとに設計されるため、インフレータもそれぞれの車種で形状が異なるといいます。またインフレータの出力も、車種ごとに調整する必要があります。つまりリコール車種それぞれに対応したインフレータを、新たに設計開発し、実証試験をしなければならないのです。

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代替品のインフレータは大丈夫なのか?

タカタのエアバッグのには、インフレータに硝酸アンモニウムが使われていました。

ところが硝酸アンモニウムは、湿気を含んだり、成型材の加圧が不足したりすると、非常に不安定な状態に陥ってしまいます。にもかかわらずタカタ製のインフレータには、乾燥剤なしで製造されているものがありました。

不安定な状態となった硝酸アンモニウムが異常燃焼を起こし、インフレータの金属ケースが破損、エアバッグ作動時に金属片が車内に飛散したことで、死亡事故が起こったのです。

ダイセルのインフレータがリコール

ダイセル等が製造するインフレータには、硝酸グアニジンが使われています。しかしこのインフレータが作動せず、衝突時にエアバッグが展開しなかったため、ホンダのライフアクティにリコール届けが出されています。このときダイセルの株価は急落しました。

今回の不具合はガス発生剤(つまり硝酸グアニジン)を燃焼させる火薬に問題があったということで、硝酸グアニジン自体が燃えなかった、あるいは異常燃焼を起こしたということではありません。また、リコール対象となっているエアバッグは、タカタとは無関係なものです。

しかしリコールされたことからもわかるように、硝酸グアニジンを用いたインフレータだからといって、安全が保証されるわけではないのです。安全を確保するには、すべての部品を適切に機能させる必要があります

過度なプレッシャーは不正の元

サプライヤーはタカタの代替品を生産するのに手こずっています。このような状況で行政やマスコミ、そして自動車メーカーがプレッシャーをかけすぎれば、見切り発車で不完全な代替品を供給するサプライヤーが出てきてもおかしくありません。

いいかげんなものに交換されて不利益を被るのは消費者であり、社会全体です。テクノロジーに過大な期待をするのではなく、一歩一歩着実に改善することを求めるべきでしょう。今後も硝酸グアニジンを用いたインフレータの不具合は発生すると思いますが、落ち着いて対応してもらいたいものです。

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