若者のクルマ離れはウソだった!?
若者の車離れが叫ばれて久しいです。
その典型例は、「今の若者は車に興味がない」「みんなスマホに夢中だ」「それに若者の収入は下がる一方でお金も無い」「だから車が売れなくなった」「ぜんぶ自民党が悪い」というものですが、実はクルマ離れしてないんじゃないか?という、意外な調査結果が発表されました。
起きているのはクルマの「所有」離れ?
時間貸し駐車場を管理運営する「パーク21」グループは、カーシェアリングサービスも提供しています。
そのカーシェアリングサービス利用者の年齢分布を見るかぎり、若者のクルマ離れは起きていないと言うことです。
20代・30代・40代のいずれにおいても、それぞれの年代別人口比率の約2倍の利用者がいるのだとか。
トヨタや日産でも無理?若者向けに安くて楽しいクルマは作れないのか | オートックワン
ちょっと気になったので、この「車知楽」の閲覧者の年齢も調べてみると、18〜24歳が11.19%、25〜34歳が25.37%でした。(Google Analyticsという解析ツールのデータ)
年齢階層別人口では、18〜24歳が11.01%、25〜34歳が12.54%です。
前者は閲覧者の比率とほぼ同じ、後者は2倍となっています。
よって車知楽のユーザー層においても、「若者のクルマ離れ」は観察できませんでした。
本当にクルマは売れていないのか?
若者がクルマ離れしていないと仮定すると、国内販売台数の減少理由として、いくつかの仮説が考えられます。
- そもそもクルマ離れなんて起きておらず、自動車メーカーが煽ってただけ説
- 公共交通機関の発達で、クルマの需要そのものが減っている説
- 車が壊れなくなったから新車が売れなくなった説
- 日本が貧しくなったせいで、クルマが売れなくなった説
- 消費スタイルが変化した説
ここからは、上記5つの仮説を検証していきたいと思います。
まず1ですが、国内販売台数が減り続けているのは事実ですから、これはありえません。ただし、自動車メーカー側が、クルマが売れなくなった原因を読み間違えている可能性はあります。
2はクルマ離れの話題になるたびによく言われるものです。
もっともらしい主張ですが、果たして事実なのでしょうか?
「公共交通機関の発達したせいでクルマが売れない」説
人口100人当たりの自動車保有台数を見ると、47位が東京都で、46位が大阪府、45位が神奈川県と、大都市が所在する都道府県が下位を占めています。
いずれも公共交通機関が発達した都道府県です。
しかし都道府県別の自動車保有台数を1995年と2015年で比べてみると、東京都は458.4万台→441.3万台、大阪府は359.4万台→372.7万台、神奈川県は360.4万台→399万台と、20年間ほぼ横ばいで推移しています。
大都市への人口の流入が続いているため、この20年間で東京都は+185万人、大阪府は+4.2万人、神奈川県は+90.1万人も増加しています。
したがって都市部における人口当たりの自動車保有台数が減っているのは事実と思われます。
ちなみに国別の1,000人あたりの自動車所有台数を見てみると、日本は591台で、フランス(578台)やドイツ(572台)、イギリス(519台)よりも多いです。
なので現在の国内販売台数は適正水準だと思われます。
「車が壊れなくなったから新車が売れなくなった」説
これも事実です。乗用車の平均使用年数※1は、1976年当時は6.9年だったものが、2013年には12.58と、37年間で2倍も長く使えるようになりました。
※1 国内で新車登録されてから登録抹消になるまでの期間の平均年数のこと。
「日本が貧しくなったせいでクルマが売れなくなった」説
年収の中央値が下がり続けているので、日本人が貧しくなっているのは事実でしょう。
しかし年収の中央値が下がり続けているのは、アメリカも同じです
にも関わらず、アメリカの自動車販売台数は伸び続けています。
日本は公共交通機関の発達により、日常生活でクルマを使う必要性が無くなったということ、そして人口増加率の差が、日米の差になっているのだと思います。
そのような環境要因を「若者のクルマ離れ」とは表現するのは如何なものか。
鉄道網を廃止しろとでも言うんですかね?
消費スタイルの変化
米国ではリーマン・ショック以降、経済成長が鈍化し、「ニュー・ノーマル」と言われる時代が到来しました。
やみくもに経済成長を追い求めるのではなく、安定した成長を重視する経済政策を取るべきだというスタンスです。
しかしニュー・ノーマルは、経済政策だけに変化をもたらしたわけではありません。
消費者のライフスタイル・消費スタイルをも変化させたのです。
日本では東日本大震災以降の変化が大きかったようですね。
ニュー・ノーマルの消費スタイルは、「流行よりも機能性」「ものを増やさない生活(ミニマリスト、断捨離)」「モノからコトへ」などに特徴づけられます。
自動車メーカーはニュー・ノーマルに対応しているか?
「最近のクルマは高い」という声をよく耳にします。
燃費の改善や排ガス規制への対応、衝突安全性能の向上など、クルマへの要求は厳しくなる一方なので、コスト増も致し方ない部分はあるのですが、購入しづらくなったのは否定できません。
冒頭で紹介したように、若者の間でカーシェアリングサービスが伸びているのも、コスト増を嫌気して「所有」から「共有」へと、お金の使い方を切り替えたためでしょう。
モノを増やさず、機能的に消費し、その体験をSNS等で共有・拡散していくのが、現代の消費スタイルなのだと思います。
体験するだけなら所有する必要はないというのがポイントです。
「クルマを売る」から脱却せよ
にも関わらず自動車メーカーは、相も変わらず「クルマを売る」に固執し、「クルマを入り口にして色々なことを体験してもらう」方向へと舵を切っていません。
iPhoneが登場したとき、日本の家電メーカーは「あんなものウチでも作れる」「すぐに追いつく」と豪語していました。
しかしiPhoneがもたらす体験まではコピーできなかったのです。
現在ではiPhoneの販売台数は鈍化し始めましたが、iTunesなどのサービス売上は伸び続けています。
モノづくりだけで勝負する時代はとっくの昔に終わっているのです。
少ないイニシャルコストで顧客に楽しい体験をしてもらい、SNSを通じてその体験を共有・拡散してもらうにはどうすべきか、自動車メーカーも真面目に考える時期に来ていると思います。
例えばレンタカーやカーシェアリングを通じて店舗やイベントに送客するとか、Uberのようなライドシェアとカーシェアリングを組み合わせるなど、やり方はいくらでもあるはずです。
まとめ
国内販売台数の減少理由は、「公共交通機関の発達」「車が壊れなくなったこと」「消費スタイルの変化」等の複合要因によるもので、「若者のクルマ離れ」である可能性は低いと考えられます。
中高年層と比べて若者がクルマを買わないように見えるのは、単に子供がいるかどうかの違いが大きいのではないでしょうか? 晩婚化が進み、シングルで過ごす時間が長くなっている今の日本においては、子供がいないとクルマを購入する必然性が(とくに都市部では)低いと言えます。
販売台数減少の対策としては、所有せずに楽しめるクルマ社会の構築、つまり「クルマのサービス化が不可欠です。
参考サイト一覧
労働力調査(基本集計)平成27年(2015年)平均(速報)結果の概要
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