VW I.D. R Pikes Peakがコースレコード樹立! 前人未到の8分切り達成!

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パイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライム(PPIHC)において、電気自動車(EV)が新記録を樹立しました。
フォルクスワーゲン(VW)が製作した「I.D. R Pikes Peak」が、7分57秒148というコースレコードを叩き出したのです。

今回はVW I.D. R Pikes Peakのパイクスピーク新記録についてお伝えします。


VW I.D. R Pikes Peakのパイクスピーク新記録

これまでの記録は、プジョーが2013年に208 T16(パイクスピーク用のレーシングカー)で記録した、8分13秒878でした。

プジョー・208 T16

パイクスピークは2012年にコースが全舗装されたので、それ以前の記録とは比較しようがないのですが、フルコースを走って8分台という記録は、2013年のセバスチャン・ローブ(プジョー)と、2016年のロマン・デュマ(Norma)だけでした。

それが今回のVWは、いきなり7分台に入れてきたのですから驚きです。
I.D. Rのドライバーを務めたロマン・デュマは3連覇、通算4度目のパイクスピーク制覇ということで、こちらにも脱帽ですね。

VW I.D. R Pikes Peakのスペック

I.D. R Pikes Peakは、680psのモーターを2基搭載し、1360psを発生します。

一方、2015年にEV記録の9分07秒222を打ち立てたDrive eO PP100は、1596psでした。
実はI.D. R Pikes Peakは、パワーにおいて最大のライバルに劣っていたのです。

しかし車重を1100kg以下に抑え、風洞実験によって徹底的に空力性能を追求するなどして、I.D. R Pikes PeakはEVの新記録を樹立するだけでなく、ガソリン車すら上回る史上最速タイムを記録しました。

なぜこんなに速いのか

I.D. R Pikes Peakの速さの秘密は、パイクスピークという特殊な環境に完全に対応したことにあると思います。

パイクスピークはスタート地点の海抜が2826m、フィニッシュ地点は4302mです。
なのでフィニッシュに近づくにつれ、空気がどんどん薄くなっていきます

空力の差

空気が薄くなるため、ダウンフォースも減っていきます。
パイクスピークにエントリーする車が巨大なウイングを装着しているのはそのためです。

Drive eO PP100のフォルムを見ると、空力的な洗練度はI.D. R Pikes Peakに遠く及びません。
やはりワークスチームが風洞実験を繰り返して開発したマシンには勝てないのです。

Drive eO PP100

プジョー208 T16との比較でも、同じことが言えます。
市販車の面影が残っている208 T16と、ル・マン・プロトタイプ(LMP)のような外観のI.D. R Pikes Peakとでは、空力性能は比べ物にならないでしょう。

リアウイングをLMPから流用した208 T16だったが、全体的なフォルムは市販車然としている。
内燃機関の限界

プジョー208 T16は、3.2リッター・V6ツインターボを搭載していました。
最高出力は875ps、車重も875kgで、パワーウェイトレシオはちょうど1という驚異的なスペックだったのですが、内燃機関ゆえに、空気が薄くなるパイクスピークでは不利でした。

パイクスピークにおける正確なデータはありませんが、インディカー・シリーズが行われるパイクス・ピーク・インターナショナル・レースウェイ(通称マイルハイ)は、標高1600mという高地に存在するため酸素濃度が薄く、通常時から2割もパワーダウンすると言われています。
1476mもの高さを駆け上るパイクスピークでも、同様のパワーダウンが起こるはずです。

一方、モーターの出力には酸素濃度が影響しませんから、最初から最後まで同じ出力で走ることができます。

また、山道のつづら折れでは、モーターの加速性能が有利に働くはずです。
ドライバーのロマン・デュマも「ロケットみたいに加速する」とI.D. R Pikes Peakの加速力を評しています。
勝つべくして勝ったということです。

すっかりパイクスピークの人になったデュマ。

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