メルセデス・ベンツCLK-GTRがオークションに 5億円の名車はレースのために生まれた

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メルセデス CLK-GTRが、RMサザビーズのオークションに登場します。
CLK-GTRは。1997年から始まったFIA-GT選手権にエントリーすべく、メルセデスが製作したGT1車両です。

今回はCLK-GTRの画像と概要の他、そのヒストリーにも簡単に触れてみたいと思います。


CLK-GTRの歴史

製作の経緯

メルセデスは長年DTM(ドイツツーリングカー選手権)に参戦していましたが、そのDTMは1995年にITC(国際ツーリングカー選手権)となり国際レース化した挙げ句、コストの高騰でマニュファクチャラーが次々と撤退し、選手権自体が無くなってしまいました。

https://www.youtube.com/watch?v=Ku6K2W8d0Co
1996年のITC鈴鹿戦の様子

FIAは、BPR グローバルGTシリーズを直轄化し、1997年よりFIA GT選手権として再スタートさせることを決定します。
ちなみにBPRは、1992年に終了した世界スポーツカー選手権(WSC)の受け皿として1994年に作られた耐久シリーズで、あのステファン・ラテル(ブランパンGTのプロモーター)も創設者の1人として関わっていました。

ITCの崩壊とFIA GTの発足を受け、メルセデスはCLK-GTRの製作を決定。
短期間で完成にこぎつけるべく、メルセデスはBPRでチャンピオンマシンとなったマクラーレンF1 GTRを、ラルブル・コンペティションから秘密裏に購入。
そのエンジンを自社製のM120型V12に換装してテストするなど、なりふり構わぬ姿勢で開発を行いました。

マクラーレンF1 GTRとの激闘

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CLK-GTRは設計から128日後には完成し、1997年のFIA GT開幕戦ホッケンハイムにエントリーします。
しかしデビュー戦のCLK-GTRは熟成不足が露呈し、1台はブレーキトラブルでわずか5周しか走れずリタイア、もう1台は完走こそしたものの、優勝したマクラーレンF1 GTR(BMW/シュニッツァー)から24周遅れという屈辱的な結果でした。

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最大のライバルだったBMW/シュニッツァーのマクラーレンF1 GTR(写真はラグナ・セカ戦のもの)

ですが翌戦の大雨となったシルバーストーンでは、早くも2位を獲得。
赤旗が出されたタイミングのせいで優勝を逃したものの、マクラーレンと互角のレースを展開したのです。

3戦目のヘルシンキ市街地コースではノーポイントでしたが、3台目のCLK-GTRを投入した第4戦ニュルブルクリンクでは早くも1-2フィニッシュを達成し、タイトル争いの主役に名乗り出ます。

その後ベルギー・スパではマクラーレンに敗北したものの、オーストリア、鈴鹿、ドニントンと、3戦連続の1-2フィニッシュを成し遂げ、2位になったイタリア・ムジェロ戦を除けば、後半戦は負け無しでした。

終わってみれば11戦中6勝の圧勝で、11号車をドライブしたベルント・シュナイダーがタイトルを獲得。
CLK-GTRはデビューイヤーを最高の結果で終えたのです。

https://www.youtube.com/watch?v=WR_41BnVuGA
1997年のFIA-GT選手権前半戦レビュー

翌1998年の開幕戦のオシャースレーベンと第2戦のシルバーストーンでも勝利を上げ、その後はCLK LMにバトンを渡しましたが、CLK-GTRはプライベーターのPersson Motorsportに供給され、最終戦まで走り続けました。

ちなみに後継のCLK LMは、1998年のFIA GT選手権を8連続1-2フィニッシュで完全制覇します。
メルセデスがあまりにも勝ちすぎたため、1999年のFIA-GT・GT1クラスには参戦マニュファクチャラーが出現せず、クラスそのものが廃止されてしまいました。

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CLK-GTRの概要

メルセデス・ベンツCLK-GTR

この部分だけ切り取ると、普通のメルセデスと区別がつかない。

全高は1102mmしかない。

巨大なサイドシルがあるので、乗り降りは大変だ。

フェンダーミラー

リアウイングは比較的おとなしめ。

テールライトも普通のメルセデスと同じだ。

快適とはいえないインテリア。

シートはかなりタイト。

メーターはスケールが340km/hまで刻まれていること以外は、至って普通だ。

レース仕様のエンジンは6.0リッター・V型12気筒ガソリン自然吸気です。
LS600と呼ばれるこのエンジンは、612ps729Nmを発生したと言われています。
このエンジンは、S600やSL600に搭載されていた、M120型エンジンから派生したものです。

ロードカーのエンジンにはイルモアの手が入り、排気量を6.9リッターに拡大。
最高出力こそ変わらないものの、トルクが775Nmに増大しています。

ギアボックスは6速シーケンシャル。
車重はレーシングカーが1,005kg、ロードカーは1,440kgとなっています。

ロードカーの0-100km/hは3.8秒と、現代のスーパーカーと比較すれば、驚くようなタイムではありません。
しかし最高速は344km/hであり、その空力性能の高さがうかがえます。

キャビンはかなりコンパクト。

カウルを外すとこんな感じ。

フォーミュラカーのような薄いAアームが装着されている。

ホモロゲーションを取得するために生産されたロードカーの台数はわずか25台で、そのうち5台はロードスターです。

今回RMサザビーズに出品された車両は米国に輸出されたもので、シャシーナンバー9、走行距離1500km以下、登録済みで、現在でも時折公道を走らせているものなのだとか。
RMサザビーズは、425~525万ドルで落札されると予想しています。

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