PSAとフィアット・クライスラーが合併しても、果たして勝算はあるのか?
プジョーやシトロエン、オペルといったブランドを保有するPSAと、フィアット・クライスラー・オートモビルズ(FCA)が、合併するかもしれません。
合併についての議論が進んでいることを、PSA側が公式に認めました。
【2019年11月1日追記】PSAとFCAが対等な形で合併することが正式に発表されました。会長にはFCAからジョン・エルカン氏が、CEOにはPSAからカルロス・タバレス氏が就任する予定です。
PSAとFCAが合併する!?
当初FCAは、ルノー-日産-三菱アライアンスとの経営統合を目指していました。
かつては米国BIG3の一角だったクライスラーを、イタリアの巨人フィアットが完全子会社化して出来たFCAですが、2018年の世界販売台数では484.2万台にとどまっており、ホンダ(532.3万台)1社にも及ばないレベルです。
そのためFCAはルノー-日産-三菱アライアンスとの経営統合を画策したわけですが、ルノーの株主であるフランス政府や、統合計画の情報から遠ざけられていた日産の不満を解消できず、統合の話は結局立ち消えに終わってしまいました。FCA側は日産の先進技術が欲しかったようなのですが、その日産が難色を示したことが決定打になったようです。
PSAとFCAの合併に勝算はあるのか
そこで今度はPSAとの合併話が持ち上がったわけですが、合併したところで果たして勝算はあるのでしょうか?
他社に見劣りするスケールメリット
ルノー-日産-三菱アライアンスは、2018年に世界で1,075.7万台もの自動車を販売した超巨大連合です。
一方、PSAは387.8万台を販売したに過ぎません。
仮にPSAとFCAが合併すれば、ゼネラル・モーターズ(GM)を抜いて世界販売で4位となりますが、フォードと提携しているフォルクスワーゲンや、スバル、マツダ、スズキなどと提携するトヨタと比べると、スケールメリットの面で見劣りします。
新興国市場におけるシェアの少なさ
また、世界最大の自動車市場となった中国において、フランス系自動車メーカーに存在感が無いのも気がかりです。
フランス系自動車メーカーの中国市場におけるシェアは、全ブランド合わせてもわずか0.7%程度しかありません。
FCAはジープ・ブランドが中国で人気なものの、合併によって中国でのシェアが大幅に増えるということはないでしょう。
東南アジア市場にも同じことが言えます。
PSAやFCAのブランドは、東南アジアでほとんどシェアがありません。
成長著しい新興国市場で存在感が無い者同士が合併しても、合併後の成長は見込めないでしょう。
欧州市場での競合
結局PSAとフィアットのシェアはほぼ欧州だけ、クライスラーのシェアはほぼアメリカだけのメーカーと言えます。
PSAとフィアットは欧州市場で競合する関係ですし、合併しても上手く行かない可能性の方が高いのではないでしょうか。
次世代自動車技術に関する技術力の不足
EVや自動運転に関する技術でも、PSAやFCAが特に優れているとは思えません。
両者が合併する・しないに関わらず、いずれ他の自動車メーカーに吸収されるのではないでしょうか。
生き残りをかけた自動車メーカーの再編劇は、まだまだ続きそうです。
出典・参考サイト
【2019年版】世界自動車メーカー販売台数ランキング ―トップは3年連続のVW – automotive.ten-navi.com
各国のモデル別最新情報 – marklines.com
フィアット・クライスラーとPSAが合併交渉 – bloomberg.co.jp
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