新型プリウス発売! 燃費40.8km/LのEグレードを検証する

トヨタの新車情報

目標は一応達成したが……

12月9日、新型プリウスが発売となりました。すでに6万台もの受注を抱えているそうで、その人気ぶりが窺えます。

新型プリウスE_外観

画像の出典: toyota.jp


奇抜なデザインのために市場での成功が不安視された新型プリウスでしたが、スタートダッシュには成功したといえるでしょう。シエンタと同様の納車待ち問題(新型プリウスは納車まで3か月〜5か月かかるとのこと)が既に発生しているのは少し気になりますが……。

燃費40km/L超えは「E」グレードのみ

さて期待されていた燃費ですが、燃費40km/Lを越えるのは最軽量グレードの「E」だけでした。

筆者は燃費40km/L超えは難しいと思っていました。JC08で35~36km/Lぐらいと予想したのですが、「E」以外のグレードは37.2km/Lだったので、当たらずといえども遠からずでした。

トヨタはJC08モード燃費計測用に軽量グレードの「E」を設定し、40.8km/Lという数値を叩きだしました。フィットハイブリッドと同じ手法ですね。

カタログ燃費の秘密は「車重1080kg」にあり!?

現行デミオも燃料タンクをわざわざ小さくして、JC08対策をしていた(車両重量はガソリン満タン時の重量を用いる)と記憶しています。


新型プリウス・燃費40km/L超えのカラクリ

モード燃費はシャーシダイナモの上で計測しますから、空力や重量などはそのままでは反映されません。

そこで計測結果の数値に補正をかけるわけですが、重量に関する補正値は、カタログ記載の車両重量に+110kgした「試験自動車重量」の数値ごとに区分され、その範囲内の車両には全て一律の「等価慣性重量」という補正値が適用されます。

試験自動車重量(kg) 等価慣性重量(kg)
1191~1305 1250
1306~1420 1360
1421~1530 1470
1531~1640 1590
1641~1760 1700

新型プリウスの「E」の車両重量は1310kgなので、試験自動車重量は+110kgして1420kgとなります。1306〜1420kgの区分にギリギリ収まるため、補正値である等価慣性重量は1360kgが適用されます。

その他のグレード(2WD車)では試験自動車重量の区分は1421〜1530kgとなり、等価慣性重量は1470kgが適用されます。

カタログ車重1390kgの「Aプレミアム・ツーリングセレクション」も、同1360kgの「S」も、JC08燃費が37.2km/Lと同値なのは、試験時にはどちらも1470kgとして扱われているからなのです。

実燃費では大して進歩してない?

もっともその燃費もJC08モード燃費ですから、実燃費とはかなりの乖離があるのは確実です。

実燃費に近い数字が出るアメリカEPA Combined燃費では、新型プリウスの燃費は約22.1km/L(52mpg)とされています。この数値は3代目プリウス(ZVW30型)の実燃費をわずかに上回る程度で、大きな差はありません。

JC08燃費40.8km/L達成と引き換えに「E」が失ったもの

車重を軽くするために、「E」の装備はかなり簡素化されています。その内容は以下の通りです。

  • スタビライザーがフロントのみ
  • フロアアンダーカバーがリアのみ
  • エンジンアンダーカバーのサイレンサー省略
  • フロントドアガラスの撥水機能
  • リアワイパー省略
  • ファブリックシート(他グレードは上級ファブリックもしくは革)
  • 4way調整シート(他グレードのようにシート上下できない)
  • シートバックポケット(運転席・助手席)省略
  • リアセンターアームレスト(カップホルダー2個付き)省略
  • フロントコンソールトレイ省略
  • 大型コンソールボックス省略
  • トノカバー省略

「E」だけ設定が無いメーカーオプションもあります。

  • LEDフォグランプ
  • ナビレディセット(バックカメラ+ステアリングスイッチ)
  • アクセサリーコンセント(AC100V・1500W)

「E」は一般向けじゃない?

スタビライザーが省略されているため、コーナリング性能の低下は必至です。小物収納も数多く省略されており、バックカメラやステアリングスイッチも付けられないため、日常の利便性にも期待できません。静粛性や快適性も、軽量化のための犠牲になっています。

新型プリウス_E省略装備
「E」で省略された装備の一部。

画像の出典: toyota.jp


「E」は、明らかにJC08モード燃費対策グレードです。問題はその「E」が、240万円もするということでしょう。一般消費者が買うとはとても思えません。

しかし新型プリウス「E」を営業車として使うなら話は別です。営業車は10万km以上の距離を当たり前に走りますから、新車価格が多少高くても元が取れますし、装備が簡素でも問題ありません。

ラゲッジスペース容量も502L(2WD車)と、先代30プリウスの446Lから拡大されているので、営業車にはうってつけです。

最後まで読んでいただきありがとうございます。以下の記事もぜひご覧ください。

新型プリウスと同価格帯・同程度の維持費で乗れる車

新型プリウスの評価・口コミまとめ インテリア編

新型プリウスの価格と装備を分析 お買い得グレードは?