ステーションワゴンやSUVでのレース出場はオススメできない
ステーションワゴンでのレースは敗北する宿命
スバル・レヴォーグがBTCCに参戦すると発表されました。手を組むのは2015年のチームズチャンピオン、BMRです。
しかしステーションワゴンで参戦するというのはいただけません。これまでもステーションワゴンでレースしたチームはいくつかありますが、どれも成功していないからです。
目次
ボルボ 850 エステート
かつてボルボはサーキットの支配者だった
「空飛ぶレンガ」と呼ばれたグループAのボルボ240ターボ。インターテックでも活躍し、三菱スタリオンやDR30スカイラインを下して85年・86年と2連覇した優れたマシンでした。
スーパーツーリングワゴン
BTCCでは90年から2リッターNA・2WDの車で争われるようになっていました。グループAは93年に終焉し、このBTCCレギュレーションが「スーパーツーリング」として世界で主流となります。
ボルボはトム・ウォーキンショー・レーシング(TWR)とジョイントし、94年にボルボ850エステートをBTCCに投入します。
ドライバーは、フォーミュラから転向しツーリングカーデビューとなるリカルド・リデルと、1988年にシルクカット・ジャガーでル・マン24時間に勝利したヤン・ラマースでした。
巨大なボディがかっ飛んでいく様はまさに「空飛ぶレンガ」でしたが、予選・決勝の最高位はともに5位でした。95年、TWRは850サルーンを投入し、エステートはサーキットでの役割を終えました。ステーションワゴンゆえの前後重量配分の悪さはどうにもならなかったようです。
ランサーエボリューションワゴン
2006年、スーパー耐久にランサーエボリューションワゴンが登場します。「オーリンズランサーEVOワゴン」は注目度抜群でしたが、やはりステーションワゴンということで奇異の目で見る人が大半でした。
第3戦十勝24時間レースでデビューしたエボワゴンは、初戦こそST2クラス5位で終えたものの、それ以降は低迷。この年は結局デビュー戦の成績が最上位でした。
しかし翌97年の第1戦仙台ハイランドでは、雨のレースで菊池靖/西村元気組のエボワゴンが快走! ST2クラス2位となり、初の表彰台を獲得します。
ドライ路面でも戦闘力を発揮し、第3戦十勝・第4戦富士と連続で3位、第6戦でも2位に入るなど、表彰台の常連となりました。
とはいえシリーズポイントでは、チャンピオンとなった木下隆行/中谷明彦組のオーリンズランサーエボⅨにトリプルスコアをつけられており、タイトル争いするほどの戦闘力はありませんでした。
ブレーキングとコーナリングではエボセダンに負けていたものの、ストレートの伸びはエボセダン以上と言われていました。
ホンダ シビックツアラー
850エステートの失敗から20年、BTCCにステーションワゴンが帰ってきました。投入したのは前年度チャンピオンのホンダ・ユアサ・レーシング。押しも押されぬBTCC最強チームが、なぜかステーションワゴンのシビックツアラーを持ち込んだのです。
開幕前には「どうせ850エステートの二の舞いだろ」と思われていたシビックツアラーでしたが、フタを開けてみれば大善戦。ゴードン・シェデンの奮戦もあり、計3勝を上げます。
しかしランキングでは、シェデンが首位と85ポイント差のランキング3位、チームメイトのマット・ニールは首位と227ポイント差のランキング8位と振るいませんでした。
タイトル争いできなかったため、シビックツアラーでの参戦は2014年限りで終了し、2015年からはシビックタイプRで参戦しています。
スバル レヴォーグ
さて、スバルレヴォーグはどれほどの活躍を見せてくれるのでしょうか。上記の失敗事例から、ステーションワゴンで参戦する際の問題点を知ることができます。
① 絶対的な車重の重さ
レギュレーションで最低重量が揃えられるとはいえ、最低重量以下に仕上げてバラストでハンドリングバランスを調整するのがセオリーです。車重が重いと積めるバラストの量が少なくなりますから、セッティングの幅を狭めることになります。
② 前後重量配分の悪さ
巨大なリアオーバーハングは、ステーションワゴンの前後重量配分を悪化させる要因です。
とはいえエボワゴンのように、元のセダンがフロントヘビーの場合は、ワゴン化によって前後重量配分が適正化されることもあります。(絶対的な重量増を無視すればの話)
レヴォーグは後輪駆動、つまりFRで参戦するそうなので、エボワゴンと同様に前後重量配分はある程度適正化できそうです。
またFRでドライサンプ化すれば、低重心な水平対向エンジンのメリットを最大限に引き出せるでしょうから、ハンドリングも良くなると思います。
③ 空力
エボワゴンは空気抵抗が小さくストレートのスピードが伸びる車でしたが、ブレーキングとコーナリングで劣っていたため、ダウンフォースが不足していたと考えられます。つまりリフトの大きさと引き換えに、空気抵抗が小さかっただけなのです。
エボセダンはある程度空気抵抗が増えてもダウンフォースを得ることを優先していたため、コーナリングではエボワゴンを圧倒していました。
ただしレヴォーグの場合は、ドラッグ(空気抵抗)が大きいとBMR側がコメントしています。もしかしたらリフトが小さいのかもしれませんが、それは直線スピードがセダンと変わらないことを意味するので、レヴォーグに空力面でのアドバンテージがあるとは思えません。
ニュル24時間にトヨタがC-HRで参戦!?
SUVは史上初だろうから多少意義があるのかな……と思ったら、以前ハリアーハイブリッドで参戦してたんですね。参戦する意義があるのでしょうか。
レース舐めてますよね。「GT-R LM」もそうでしたが、話題性だけを求めた参戦を自動車メーカーが率先してやるのは、モータースポーツを破壊する行為だと思います。
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