どうすればF1ドライバーになれるの?

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男と生まれたからには誰でも一生のうち一度は夢見る「地上最速の男F1ドライバー」 「レーシングドライバー」とは「地上最速の男F1ドライバー」をめざす運転手のことである!

真面目な解説は目次の下から始まります。

画像の出典: XPB Images via f1fanatic.co.uk


F1ドライバーになると何か良いことあるの?

そもそもなぜF1を目指すのか? 考えられる理由を挙げてみます。

収入

F1ドライバーが高収入なのはよく知られています。2016年のF1レギュラードライバーの推定年俸は以下のとおりです。

ドライバー名 チーム名 年俸(億円) 勝利数 タイトル数
S.ベッテル フェラーリ 42.6 42 4
L.ハミルトン メルセデス 36.4 50 3
F.アロンソ マクラーレン 34.6 32 2
K.ライコネン フェラーリ 24.3 20 1
N.ロズベルグ メルセデス 15.3 23 0
J.バトン マクラーレン 11.5 15 1
D.リカルド レッドブル 4.7 4 0
N.ヒュルケンベルグ F.インディア 3.8 0
F.マッサ ウィリアムズ 3.8 11
R.グロージャン ハース 2.9 0
V.ボッタス ウィリアムズ 2.9
V.ボッタス ウィリアムズ 2.9
S.ペレス F.インディア 2.8
V.ボッタス ウィリアムズ 2.8
E.グティエレス ハース 1.8
D.クビアト トロロッソ 0.9
J.パーマー ルノー 0.8
M.フェルスタッペン レッドブル 0.6 1
C.サインツJr トロロッソ 0.6 0
M.エリクソン ザウバー 0.3
F.ナッセ ザウバー 0.3

£1=¥127.5で計算。

表を見るとわかるように、F1ドライバーといえども底辺チームや若手だと、意外と年俸が安かったりします。

逆にタイトルを獲得した経験があるドライバーは、軒並み2ケタ億円の年俸です。つまりF1は超格差社会なので、F1ドライバー=高収入というわけではありません。

持参金が無いとF1に乗れない!?

チームにお金を持ち込むことでシートを得ているドライバーもいます。いわゆるペイドライバーというやつです。

最近のペイドライバーが持ち込む金額の相場は1000万ドル(約10億円)ほどのようですが、これはドライバーの実力によって変わってきます。F1はコンストラクターズランキングによって放映権料等の分配金の額が変動するため、ポイントを沢山取れる腕の立つドライバーならば、持参金が少なくてもチームの利益に貢献してくれるからです。

しかしそもそもポイント争いに絡めない下位チームだと、ドライバーの持参金が主な収入源となります。ウィリアムズやロータスで走っていたパストール・マルドナドは、4500万ドルもの持参金を持ち込んでいたそうです。いずれのチームも彼と契約した時期には低迷しており、資金面でも苦境に陥っていましたから、マルドナドは救世主でした。

持参金>年俸だと、やるだけ損?

「持参金10億円で年俸3000万円だったら、やらない方が得じゃん」と思われるかもしれませんが、持参金を提供してくれるスポンサーは、F1だからこそ多額のスポンサーマネーを供給してくれるわけですし、レーシングドライバーのキャリアプランとして考えると、決して無駄ではありません。

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キャリア形成

F1ドライバーは、全てのレーシングドライバーの頂点に君臨しています。よってF1のレギュラードライバーになったという事実は、後のキャリアに良い影響を与えてくれるのです。

元F1ドライバーという肩書

WECやフォーミュラe、DTMなどでは、元F1ドライバーが数多く走っています。一定以上と知名度を兼ね備えた彼らは、結果を出してくれますし、スポンサーのウケもいいという、チーム側にとって大変魅力的な人材です。

もちろんそれなりのギャラを用意する必要があります。しかし"元"F1ドライバーならば、"現役"F1ドライバーよりも安く雇えるのは確実です。チャンピオン経験者はともかく、中堅の"元"F1ドライバーたちは、話題性や注目度を考えるとかなりお買い得な人材といえます。

元F1ドライバーの肩書が通用するのはレースだけではありません。F1中継の解説や、他カテゴリーのチーム監督など、レース界で仕事する上で大きな武器となります。元F1ドライバーの肩書は、キャリアを築く切り札となるのです。

モテる

あの小林可◯偉選手も、現役F1ドライバーのころは女性タレントや女優と浮名を流したものです。F1ドライバーはモテます。

夢が叶う

モータースポーツの世界で唯一無料なもの、それが夢と情熱です。F1ドライバーになりたいんや! という夢だけはプライスレス。ぜひ大事にしてください。そしてその夢を叶えてください。

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F1に至るまでの道のり

F1ドライバーになるとリア充人生を歩めそうですね。でも、一体どうやったらなれるんでしょう?

F1ドライバーになるには、「キャリア」と「お金」が必要です。2つは表裏一体なので、どちらかが欠けてもF1ドライバーにはなれません。

お金が無いと沢山練習できないので、速さを身につけることができません。速くなければレースで結果を残せず、キャリアも築けないので、スポンサーや自動車メーカーを説得することも不可能です。

一方、お金が充分にあれば沢山練習できるため、早期にキャリアを築くことが可能になります。若くて実績もあるドライバーならば、スポンサーや自動車メーカーを説得しやすくなります。お金がキャリアになり、キャリアがまたお金になるのがモータースポーツなのです。

ではどのようにキャリアを築いていけばよいのでしょう? F1にステップアップするまでの道のりと、その過程でかかる費用についてまとめてみました。

レーシングカート

アイルトン・セナもミハエル・シューマッハーも、レーシングカートからキャリアをスタートさせています。F1ドライバーを目指すなら、まずはレーシングカートで腕を磨くのが得策です。

レーシングカートは遊園地のゴーカートとは異なり、最高速度は100km/h以上、横Gは3.0Gという強烈な乗り物です。だからこそフォーミュラカーを見据えた予行練習にうってつけなんですね。

レーシングカートを始める年齢

ルイス・ハミルトンやセバスチャン・ベッテルは、8歳でレーシングカートを始めたそうです。フェルナンド・アロンソにいたってはなんと3歳でカートに乗っていたとか。

佐藤琢磨選手のように18歳からレースを始めて成功する人もいますが、できれば幼少期から始めた方が良さそうですね。

レーシングカートの予算

地方選手権を戦うのに60〜100万円/年程度、全日本選手権になると300万円〜/年の金額がかかるそうです。これは選手権に全戦エントリーしてレースをするのに必要な金額ですから、練習走行を増やせばさらに金額がかかります。

アロンソ選手は裕福な家に生まれたわけではありませんでしたが、カートで早くから才能を発揮していたためにスポンサーがつき、そのおかげでレース活動を継続できたようです。レーシングカートであっても、やはりスポンサーがいないと厳しいみたいですね。

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ジュニアフォーミュラ

F3よりも下にランクされるフォーミュラカー・レースのことです。日本では「スーパーFJ」や「FIA-F4」などが該当します。レーシングカートで腕を磨いた後に、ジュニアフォーミュラで4輪モータースポーツにデビューすることになります。

スーパーFJ

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画像の出典: lebeausset-motorsports.com

ホンダのL15Aエンジンを搭載した、入門用フォーミュラカーです。入門用といってもかなりの速さで、筑波サーキットを58秒台で周回します。

スーパーFJは安価に参戦できるよう配慮されていますが、それでも500万円〜/年(レンタルの場合)程度の金額が必要です。ちなみにシャシーは新車で350万円ほど。シャシーを購入してシリーズ全戦にエントリーすると、初年度には800万円程度はかかる計算です。

そんな金あるわけないだろ! という場合

ZAP SPEEDなどの有力レーシングガレージでは、ドライバーオーディションを開催しています。

オーディションで最優秀選手となれば、ZAP SPEEDとの契約金が免除されます。好結果を残したドライバーも契約金25〜50%免除セミサポートを受けられるそうです。

ただし契約に至ったからといって、すぐレースに出られるわけではありません。フルサポートドライバーでも、免除されるのはあくまで練習走行の費用です。

スーパーFJの参戦費用をサポートとしてもらうには、スカラシップを獲得する必要があります。スーパーFJのレースで優勝すれば、参戦費用が全額免除になるようですが……勝ち続けるのは容易ではありません。やはりある程度の資金が無いと厳しいでしょう。

FIA-F4

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画像の出典: b-maxracingteam.com

SUPER GTの前座レースとして開催されているシリーズです。FIAの名が示すとおり国際規格ですが、ワンメイクシャシーを供給するコンストラクターは、各国のシリーズごとに異なります。日本は童夢製シャシーです。

厳しいコストキャップが課せられているので、比較的安価に参戦できるシリーズですが、それでも1300〜1500万円/年程度はかかります。人気のSUPER GTと併催なので、スポンサーがつきやすいのがせめてもの救いでしょうか。

自動車メーカーの支援を受ける方法

ホンダ系ならSRS-Fが有名です。本格的にレーシングドライバーを目指す人には「アドバンス・コース」というカリキュラムが用意されています。10日間の講習で270万円と高額ですが、レーシングドライバーになるために必要な全てを学べるので、受講する価値は充分にあるでしょう。ただし対象となるのは16〜24歳で、一定の基準を満たしたドライバーのみです。

このアドバンス・コース受講者の中から選抜されたドライバー数名が、スカラシップ選考会に進めます。この選考会で優秀な成績を収めると、晴れてホンダと契約できるのです。

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ミドルフォーミュラ

F3GP3GP2が該当します。ジュニアフォーミュラで優秀な成績を収めたドライバーが、トップフォーミュラへの挑戦権を賭けて挑むカテゴリーです。ここに到達するまでに、スポンサーや自動車メーカーとのコネクションを得ておく必要があります。

F3

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画像の出典: j-formula3.com

F3ともなると、参戦費用を個人で賄うのは不可能になってきます。全日本F3選手権には、参戦費用を抑えるために作られた「F3-N」クラスがありますが、型落ち車両を使う同クラスでも、3000〜4000万円/年はかかるそうです。

選手権を争うチャンピオンクラス(Cクラス)だと8000万円/年、チャンピオン争いをするには1億円/年以上かかると言われており、もはや一般家庭で負担できる金額ではありません。F3でタイトル争いするには、ビッグスポンサーか自動車メーカーの支援が必要不可欠なのです。

GP3

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画像の出典: gp3series.com

こちらも予算は1億円/年程度と言われています。GP3はF1の前座レースとして開催されているので、F1が行われるコースを覚えられるメリットがあるものの、競争はかなり激しく、そう簡単に結果を出すことはできません。

しかし数多くのF1ドライバーを輩出しているのも事実です。F1関係者の目の前で走れるというのが、GP3最大のメリットかもしれませんね。

GP2

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画像の出典: gp2series.com

GP3と同じく、F1の前座レースとして開催されています。F1直下のシリーズとあって、次代を担う若獅子たちが数多く参戦しているシリーズです。

歴代チャンピオンはルイス・ハミルトンやニコ・ロズベルグ、ニコ・ヒュルケンベルグ、ロマン・グロージャン、ストフェル・バンドーンなど錚々たるメンバー。これだけでもレベルの高さがうかがい知れますね。

でも高いのはレベルだけではありません。参戦費用はなんと2億円〜/年です。

トップフォーミュラ

本来はF1もここに含まれるのですが、今回はF1以外のトップフォーミュラに限定して紹介します。実力を認められたドライバーのみが参戦するシリーズです。ミドルフォーミュラでトップ3に入るくらいの成績を残さないと、トップフォーミュラのチームからは見向きもされないでしょう。お金があっても実力が無いと、参戦が認められないと思います(危ないので)。

スーパーフォーミュラ

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画像の出典: tws-forged.com

日本のトップフォーミュラです。以前インタビューで中嶋悟監督が「2台走らせるのに3億円」と答えていたので、1台あたりの参戦費用は1.5億円/年ということになります。

参戦費用の全額を要求されることは無いと思いますが、やはりビッグスポンサーや自動車メーカーの支援が無いと、シートを得るのは難しいでしょう。

インディカー

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画像の出典: indycar.com

伝統のインディ500を含む全16戦で行われる、アメリカのトップフォーミュラです。

インディカーと言うとオーバルコースのイメージがあると思いますが、現在ではオーバルのレースは5戦のみ。ストリートやパーマネントサーキットでの開催が2/3を占めています。

インディカーの1台あたり参戦費用は5〜6億円/年※1と見られています。アメリカでのインディカー人気はさほど高くない(インディ500除く)ので、スポンサーを見つけるのも難しいはず。日本人が参戦するならば、やはりホンダ経由ということになると思います。

※1 How Much Does It Cost To Run A Top Indy Car Team?

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忘れちゃいけないスーパーライセンス

F1に出場するには、スーパーライセンスが必要です。「なんぴとたりとも俺の前は走らせねぇ!」と意気込んでも、スーパーライセンスが無ければ走らせてもらえません。

スーパーライセンスを取得するには、F1以外のレース成績に応じて与えられる「スーパーライセンスポイント」を、3年間で40ポイント以上獲得しなければなりません

シリーズのレベルに応じてスーパーライセンスポイントの配分が異なるので、詳しくは以下の表をご覧ください。

シリーズ名 1位 2位 3位 4位 5位 6位 7位 8位 9位 10位
FIA F2 40 40 40 30 20 10 8 6 4 3
GP2 40 40 40 30 20 10 8 6 4 3
欧州F3 40 30 20 10 8 6 4 3 2 1
WEC LMP1 40 30 20 10 8 6 4 3 2 1
INDY 40 30 20 10 8 6 4 3 2 1
Fルノー3.5 40 30 20 10 8 6 4 3 2 1
GP3 30 20 15 10 7 5 3 2 1 0
Sフォーミュラ 25 20 15 10 7 5 3 2 1 0
WTCC 15 12 10 7 5 3 2 1 0 0
DTM 15 12 10 7 5 3 2 1 0 0
INDYライツ 15 12 10 7 5 3 2 1 0 0
FIA F4 12 10 7 5 3 2 1 0 0 0
国内F3 10 7 5 3 1 0 0 0 0 0
Fルノー 10 7 5 3 1 0 0 0 0 0
CIK-FIA 5 3 2 1 0 0 0 0 0 0

FIA F2は以前開催されていたものの、現在は存在しないレースシリーズです。FIA F4のスーパーライセンスポイントが国内F3より高くなっているなど、FIAが関わるシリーズが露骨に優遇されています。

フォーミュラ・ルノー3.5は2015年限りでシリーズが終了していますが、後継シリーズのフォーミュラV8 3.5にも、上記のスーパーライセンスポイントが適用されるのかは不明です。

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