GMがオペルを売りたい理由、PSAが買いたい理由

テクノロジー・業界分析,批評

ReutersBloombergといった経済メディアが、ゼネラル・モーターズ(GM)が傘下のオペルプジョー・シトロエン(PSA)に売却するのではないかと報じています。

売却交渉にはまだ時間がかかりそうですが、もし実現すれば欧州市場における自動車メーカーの勢力図を一変させるかもしれません。
今回はオペルをめぐるGMとPSAの思惑についてです。

画像の出典: netcarshow.com


オペルを売りたいGM

名車オペル・カデット

画像の出典:by User:328cia [CC BY-SA 3.0], via Wikimedia Commons

オペルがGMの傘下に入ったのは1929年のことです。
ちょうど世界恐慌のころですね。
1925年にやはりGM傘下入りしたヴォクスホールとともに、GMの欧州戦略を担ってきました。

ヴォクスホールは第2次大戦後はオペルとの車種統合が進み、現在ではイギリスで販売されるオペル車のバッジエンジニアリングとして、その名を残しています。

そんなオペル=ヴォクスホールは、ヨーロッパでは常に苦戦してきました
1999〜2012年までの間に、オペルは147億ドル($1=¥110換算で、1兆6170億円)もの損失をGMにもたらしたと報じられています。

ちなみに2009〜2016年までに限定しても、オペルは90億ドル(同9900億円)もの赤字を垂れ流しており、GMにとっては長らく頭痛の種となっていたのです。

実は2009年にGMが経営破綻した際にも、オペルの売却話があったのですが、そのときは土壇場でGMがオペル売却を撤回し、自力再建へと舵を切ったのでした。
でも経営再建は果たせなかったようです。

オペルというと、筆者はドイツツーリングカー選手権(DTM)での活躍が印象に残っています。
2000年に復活したDTMで、メルセデスやアウディと丁々発止のバトルを繰り広げる姿を見て、オペル車に憧れたものです。

マニュエル・ロイターが駆るアストラV8クーペ。ベルント・シュナイダーのメルセデスと激闘を繰り広げた。

画像の出典: tenamp.com

2000年代前半はEU統合や共通通貨ユーロの導入を背景にヨーロッパ全体が好景気だったので、オペルも黒字だったはずです。
しかしリーマン・ショックで莫大な損失を出して以降、今になっても立ち直れていないのだと思います。

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オペルを買いたいPSA

赤字製造機と化しているオペルを、なぜPSAは買おうとしているのでしょう?

最大の理由は、スケールメリットです。
オペルと統合することで、年間の生産台数を315万台から430万台へと増やし、部品の共同調達などでコスト削減を図る狙いがあります。

また、PSAにとってはオペルからEVの技術を手に入れることができるほか、生産設備を集約できるというメリットもあるようです。

PSAはフランス・ソショーにあるファクトリーに2億ユーロを投じ、異なる6つのモデルを生産できるように設備を刷新、年間40万台を生産する体制に変更される予定なのですが、その中にはオペルブランドの車種も含まれると、PSAの欧州担当副社長は話しています。

PSAは以前からGMと提携しているので、ファクトリーへの投資は、今回の買収話に合わせたものではないでしょう。
しかし逆に言うと経営統合のハードルはかなり低くなっているわけで、PSAによるオペル買収の可能性は、かなり高いと思われます。

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PSAとオペルの経営統合後のリスク

現場レベルでは統合が進んでいるとはいえ、PSAがオペルと経営統合するリスクが無いわけではありません。

リスクその1 欧州市場へのさらなる偏重

ニュースイッチが指摘しているように、PSAもオペルも欧州市場頼みの会社です。
これらが経営統合すれば、ますます欧州市場に依存する体制になってしまいます。

ここのところ欧州自動車市場は好調で、2017年1月の新車販売も10%増でしたが、世界経済の重心が今後アジアにシフトしていくのは確実です。
しかもEUは、ブレグジットというリスクも抱えています。
にも関わらずPSAの経営資源をさらに欧州へとつぎ込むわけですから、リスク分散とは真逆の行為といえるでしょう。

リスクその2 経営統合の効果

スケールメリットによってコストダウンは進むでしょう。
しかしコスト削減が進んだからといって、市場シェアを奪えるとは限りません。

事実、1月の欧州新車販売では、PSA・オペルともにシェアを落としています。
現在販売している車に競争力が無いからです。
とはいえ統合しただけでは、車の魅力が増すことはないでしょう。

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自動車業界大再編への序章か

以前新型マーチについて書いた記事の最後に、「最近の日本車はデザインや走りでも欧州車に引けを取らなくなってきた」「今後世界の自動車市場を牽引していくのは、日本・韓国・ドイツの3カ国」「米・仏の自動車メーカーは、買収のターゲットになる可能性が非常に高い」と書きました。

オペルは一応ドイツのメーカーなものの、アメリカ資本です。
予想が的中したわけですが、まさか買うのがフランスのPSAとは思いもしませんでした。
今後も米・仏の自動車メーカーを中心に、自動車メーカーの再編が進むと思います。

日本勢はトヨタを中核としたグループ(ダイハツ、スバル、マツダ、スズキ)と、ルノー-日産-三菱のグループが形成されましたが、ホンダだけは独自路線を歩んでいるのが気がかりです。
日本の家電メーカーが証明したように、技術力「だけ」では生き残れないのですから。

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