マセラティとアルファロメオが売却される? フィアット・クライスラーが事業再編を加速中

テクノロジー・業界分析,批評

フィアット・クライスラー・オートモビルズ(FCA)が、マセラティアルファロメオをスピンオフする可能性があると報じられています。

中国の自動車メーカーがFCAの買収を提案するなど、FCA周辺では事業再編の動きが加速しています。
今回はFCAの動静についてまとめました。


スピンオフとは?

親会社の株主に対し、子会社の株式を配当として分配するやり方をスピンオフと言います。

分離することになった子会社は、独立上場会社として株式市場に取引されることになります。

親会社は、元々の親会社の株式と、子会社の株式を両方を保有することになるのです。
M&Aなどで会社売却を行った場合、所有権が買い手側の会社に全て移ってしまうのに対して、スピンオフは、子会社の上場後もしばらくの間は、親会社が株主として残っている状態のため、事業の再構築を進めるときには有効です。

スピンオフは、親会社の株価が個別の事業価値よりも低い場合、各事業価値を顕在化し、株価を高めるために使用される手法となっています。理由は、投資家に対して各事業ごとの透明性が増すから行うのです。

出典: M&A財務コンサルティング 用語集

目次に戻る

なぜアルファロメオやマセラティをスピンオフするのか?

レバンテの販売は好調なマセラティだが……。

Bloombergによると、FCAはマセラティとそのコンポーネント事業を分社化するつもりのようです。
2016年にフェラーリをニューヨーク証券取引所(NYSE)に上場しましたが、それと同様のスキームを再び用いようとしているのでしょう。

スピンオフする目的は、大衆車事業にリソースを集中させることと、来年末までに42億ユーロ(約5430億円)の債務を削減するためだといわれています。

高級車事業の見直し

たとえばマセラティの売上高は、2015年に一度減少したものの、2016年にはV字回復を遂げており、決して業績不振ではありません。

しかしフェラーリなどの競合ブランドと比較すると、その利益が見劣りするのも事実です。
売上高はフェラーリの方が少ないのに、EBIT(利払い前・税引き前利益)ではフェラーリの方が多くなっています。

アルファロメオは、久々に出した新型車である「ジュリア」が販売不振です。
FCAはジュリアの販売台数を年間17万台と予想していましたが、実際は12万台程度だったと言われています。
新車効果があるはずのリリース初年度に、目標未達というのはかなり珍しいことです。

アルファロメオは長いトンネルから抜け出せずにいる。

業績好調なフェラーリは、FCAが高級車ブランドを保有するより、スピンオフさせた方が良くなる可能性があることを示しています。
FCAはスピンオフに先立ち、マセラティやアルファロメオの提携先となる、高級車ブランドのパートナーを探しているのです。
その方がシナジーも生まれやすく、リスクもヘッジできます。

株主価値を高める

ゴールドマン・サックスはFCAの事業価値を、およそ500億ユーロと算定しています。
しかしFCAの現在の時価総額は、245億ユーロほどしかありません。
市場からはまったく評価されていないわけですね。

マセラティとアルファロメオには70億ユーロ、そして部品メーカーのマニエッティ・マレリには50億ユーロの価値があるといわれています。
これらをスピンオフして各事業価値を明確にすれば、その売却益によってFCAの債務を削減できますし、大衆車事業にリソースを集中させ、FCAの企業価値をさらに高めることもできるのです。

事実、マセラティに売却の可能性があると報じられると、FCAの株価は4.3%も上昇しました。

目次に戻る

中国の自動車メーカーの動き

グレートウォール・M4

フェラーリはNYSEに上場するという形でスピンオフしましたが、アルファロメオやマセラティがどうなるかはわかりません。
他の自動車メーカーに売却させる可能性もあります。

売却先の有力候補は、中国の自動車メーカーです。

先日、中国の自動車メーカーである「グレートウォール(長城汽車)」が、ジープブランドの買収に興味を示していると報じられました。

ですがジープの買収はFCA側が拒否。
先述のように、FCAは大衆車事業に注力しようとしていますから、ジープの売却はありえません。
しかし、マセラティやアルファロメオといった、高級車事業なら話は別です。

また、かつてFCA全体の買収計画について否定した、東風汽車吉利汽車も、マセラティやアルファロメオなら購入するかもしれません。
前者は中国でルノー・日産ホンダプジョー・シトロエンなどと合弁で自動車を生産しており、後者はボルボロータスの親会社です。
特に吉利はブランド戦略的にマセラティやアルファロメオと親和性が高いと思われるので、有力候補と言えるでしょう。

目次に戻る

FCAの事業再編はまだまだ続く

VW Amarok

ウォール・ストリート・ジャーナルが、FCAがフォルクスワーゲンと、商用車やピックアップトラックに関する提携交渉をしていると報じています。

具体的には、VWのピックアップトラックである「Amarok」や商用車「Caddy」の次期型を、FCAとジョイントベンチャーや合弁企業を作り、共同で開発・生産するつもりのようです。

FCAはAmarokサイズのピックアップトラックをラインナップに加えることで、ダッジ・ラムよりも下のクラスのピックアップトラック市場に参入できるメリットがあります。
トヨタ・タコマや、日産・フロンティアがしのぎを削るミッドサイズ・ピックアップトラックは、近年需要が高まっているクラスです。

FCAとVWの交渉はまだ始まったばかりとのことですが、ディーゼルエンジンの排ガス不正事件によりアメリカでのシェアを失ったVWにとって、FCAからの提案は魅力的でしょう。
これを足がかりにFCAとの提携範囲を広げていけば、アメリカでのシェア奪回も夢ではありませんからね。

目次に戻る

最後まで読んでいただきありがとうございます。以下の関連記事もぜひご覧ください。