BMWとジャガー・ランドローバー(JLR)が小型車プラットフォームを共有か
EVの共同開発から始まったBMWとJLR(ジャガー・ランドローバー)の提携関係は、エンジンの共有に深化し、ついには小型車プラットフォームの共有にまで発展しました。
新型1シリーズから導入されたBMWのFAARアーキテクチャを共有することで、ジャガーは小型のSUVとクーペ・クロスオーバーを、ランドローバーはベイビー・ランドローバーを、それぞれのラインナップに加えることができます。
レンジローバー・イヴォークなども、次期型からFAARアーキテクチャへと切り替わることになるでしょう。
今回はBMWとJLR双方の思惑と、FAARアーキテクチャの概要をご覧ください。
FAARアーキテクチャとは?
BMWの小型車用アーキテクチャで、横置きエンジンの前輪駆動車用です。
FAARアーキテクチャは、ICE(内燃機関)、(プラグイン)ハイブリッド、そしてEV(電気自動車)の全てに対応しています。
このアーキテクチャはBMWの前輪駆動車だけでなく、MINIの全モデルをカバーする予定です。
FAARは全長4.2~4.6m前後までをカバーできると考えられています。
なぜアーキテクチャを共有するのか?
JLRの事情
現在JLRは、MLAアーキテクチャというものを開発中です。
MLAアーキテクチャは、次世代のディフェンダーやレンジローバーなどに採用されます。
つまり中・大型車向けのプラットフォームです。
MLAもFAARと同様に、あらゆるパワートレインに対応しています。
2年で5車種の大攻勢
JLRはMLAアーキテクチャを導入し、今後2年以内に5車種の新型車を投入する計画です。
ランドローバーは新型ディフェンダー、ロードローバーと呼ばれているクロスオーバー車、新型レンジローバーの3車種を、ジャガーは新型XJと新型SUVであるJペースの2車種を投入します。
これら全ての車種にMLAアーキテクチャが採用される見込みです。
JLRがアーキテクチャの更新を急いでいるのは、CO2排出規制が強化されるためです。
2025年からは平均CO2排出量を80g/kmに抑えなければならない上、年間生産台数の15%を、EVまたは長距離のEV走行が可能なPHEVで賄わなければなりません。
JLRはMLAアーキテクチャで中・大型車セグメントにEVやPHEVのラインナップを増やしつつ、小型車向けにはFAARアーキテクチャをBMWから調達して、開発コストを抑えようとしているわけです。
JLRは2019年度4~6月期の決算で3億9500万ポンド(約503億円)もの損失を計上するなど、売上の減少(特に中国市場の減速)に悩まされているので、小型車用のプラットフォーム開発に回すお金が無いのでしょう。
BMWの思惑
BMWからすれば、JLRがFAARアーキテクチャを使ってくれれば量産効果でコストダウンが期待できますから、願ったり叶ったりです。
現在BMW(MINIを含む)は、年間85万台ほどの前輪駆動車を生産しています。
JLRは年間25万台ほどの小型車を生産しているので、仮にそれら全てがFAARアーキテクチャに切り替われば、それだけで年間100万台ほどのボリュームで生産できるようになります。
しかもJLRはFAARアーキテクチャを用いた新型車を3車種導入するため、2025年には年間150万台ほどがFAARアーキテクチャに基づいて生産されることになるそうです。
コストダウンの効果はかなりのものになるでしょう。
パワートレインの電動化や自動運転などの開発コストにより、自動車メーカーは高コスト体質になりつつあります。
コストダウンの機会を抜け目なく模索していかないと、資金不足から技術開発競争に取り残されてしまうことでしょう。
提携や合併・買収など、業界の再編が今後加速するはずです。
出典・参考サイト
Two new compact Jaguar SUVs on the cards, tipped to use BMW platform – autocar.co.uk
ジャガー・ランドローバー 2年以内に5車種の新型車 生き残り賭け – autocar.jp
ジャガー・ランドローバー、赤字拡大 2019年度4-6月期決算 – response.jp
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