時代は脱ディーゼル! マツダのディーゼル北米導入は失敗する?【12/6更新】
マツダが新型CX-5のディーゼル(SKYACTIV-D)をアメリカに導入してようとしていますが、ドイツメーカーはディーゼル販売を止めようとしています。
フォルクスワーゲン(VW)のディーゼルゲート事件以降、ディーゼルエンジンに対する規制と市場の需要は急速に変化しつつあるようです。
今回はVWとメルセデス・ベンツの「脱ディーゼル」の動きについて書いてみました。
更新情報
「世界の各都市でディーゼル排除の動きが加速」を追加しました(2016/12/06)
画像の出典: netcarshow.com
VWの脱ディーゼル戦略
VWの開発部門のトップであるDr.フランク・ウェルシュによると、48Vのマイルドハイブリッドシステムと大容量化されたバッテリーにより、ガソリンエンジンのCO2排出量を6〜8g/kmほど改善するそうです。
燃費換算だと0.7〜2km/Lほど向上する計算です。
「排ガス試験をクリアするには多大なコストを要求される。そのことがスモールカーのディーゼルエンジンを過去のものにした」とウェルシュ氏。
「今日のディーゼルエンジンは、ガソリンエンジンに比べ高価になっている。利益を生み出すにはより厳しい水準で仕事しなければならなくなった。
今はポロのような車でもディーゼルの顧客が十分にいるものの、このような状況は永遠には続かない」
VWがディーゼルゲート事件を起こしたため、今後はますますディーゼル車に対する締め付けは厳しくなるはずです。
よってディーゼルエンジンの価格が今後安くなる可能性はほぼ無いため、ポロのように安価なスモールカーに搭載するのは難しくなります。
しかも欧州では、CO2排出量を95g/km以下(燃費24.42km/L以上)にするという燃費規制が2020年に施行されるため、パワートレインの電動化が避けられない情勢です。
しかしストロング・ハイブリッドはコストがかかりますから、次善の策のとして48Vマイルドハイブリッドが注目されているわけです。
48Vマイルドハイブリッドの将来性
48Vシステムは、燃費=環境性能の向上だけでなく、静粛性のアップとアイドリングストップからのスムーズな復帰をも可能にします。
プリウスのようなストロング・ハイブリッドの電圧は、100Vをゆうに上回りますが、48Vなら人体にとって危険ではないレベルの電圧(危険レベルは60V以上)なので、安全対策等のコストがかからず、低コストでの導入が可能なのです。
また、高出力のモーターを使える点や、補機類(電動コンプレッサーや回生用のスターター/ジェネレーター、電動スタビライザーなど)も高電圧で使えるようになるため、12Vのマイルドハイブリッドよりも高効率です。
日立オートモティブシステムズによると、2023年の48Vマイルドハイブリッドの生産台数は、中国で400万台以上、欧州でも200万台以上になると見込まれています。
メルセデス・ベンツの脱ディーゼル戦略
アメリカでC300d 4maticを販売しないという決断をしたメルセデスは、アメリカでのディーゼル車販売を止めることを考え始めています。
メルセデスは新型ディーゼルモデルの承認をEPA(アメリカ環境保護局)から取り付けるべく、多くの時間とコストを費やしているようですが、ディーゼルゲート後はさらに多くの努力が必要になり、Cクラスディーゼルの発売を断念するに至ったようです。
現在メルセデスはディーゼル車に関するマーケティング・リサーチを行っています。結果は2017年の初頭に出る予定です。
メルセデス・ベンツのセールスおよびプロダクト担当副社長、マティアス・ルアズ氏は、リサーチの結果次第では、アメリカにおけるディーゼルエンジンの販売停止を考えていることを認めました。
「それは理論的なオプションだ」とルアズ氏。
「まだ結論には至っていないが、我々は言うまでもなく、常に車の開発と販売を顧客の要望に従って行ってきた」
アメリカにおけるディーゼル車の需要
アメリカは環境規制が厳しいだけでなく、ガソリン価格も安い(1ガロンあたり2ドル程度=リッターあたり61円くらい)ので、ガソリン車よりも高価なディーゼル車の需要はあまりありません。
2016年10月のディーゼル車の市場シェアはわずか0.78%、販売台数は9924台に留まっています。
しかもそのうち7000台ほどは、ダッジ・ラム(ピックアップ)とフォード・トランジット(商用車)です。
ディーゼルの乗用車は微々たる台数でしかありません。
よってマツダが新型CX-5のディーゼル(SKYACTIV-D)を導入しても、アメリカ市場で大幅に販売台数を伸ばすのはおそらく不可能です。
一刻も早く新型CX-5に直噴ターボ(SKYACTIV-G 2.5T)を導入すべきでしょう。
直噴ターボを搭載したCX-9が大ヒットしているのですから。
世界の各都市でディーゼル排除の動きが加速
日本では東京都が2003年からディーゼル車の排ガス規制を行っていましたが、その後クリーンディーゼルの普及とともに、あまり話題に登らなくなりました。
しかしVWのディーゼルゲート以降、大気汚染の原因として再びディーゼルエンジンが槍玉に上げられています。
C40サミット(世界大都市気候先導グループ)は、気候変動対策に取り組む大都市で構成されたネットワークです。
そのC40においてパリ、マドリード、アテネ、メキシコシティの各都市が、2025年までに都市からディーゼル車を排除することで一致しました。
4都市の市長は、ディーゼル車の禁止措置がどのような段階を経ていつ施行するのかについては明言していないものの、期限を定めた点に関しては画期的です。
今後追随する都市が現れるかもしれません。
サミットの席で国連の気候変動と大気汚染のトップであるヘレナ・モリン・バルデス氏は、「ディーゼル車に由来するススは、病気や温暖化の大きな原因の1つになっている」と述べています。
また、ガーディアン紙によれば、ディーゼル車の有害なNOxなど汚染された空気の影響で、年間300万人が死亡しているそうです。
ディーゼルへの締め付けがさらに厳しくなるのは避けられないでしょう。
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