トランプ大統領の脅迫で、自動車メーカーもアメリカ・ファースト!?【1/6更新】
トランプノミクスの影響が早くも出始めました。
フォードがメキシコの新工場建設計画をキャンセルし、代わりにミシガン州・フラットロックの工場を拡張する決断を下したのです。
更新情報
「トヨタにも圧力が」を追加しました。(2017/01/06)
フォードの心変わり
フォードは16億ドル(約1880億円)を投資し、メキシコ・サンルイスポトシに新工場を建設する予定でした。
サンルイスポトシの新工場では、フォード・フォーカスを生産する計画でしたが、新工場建設がキャンセルされたため、フォーカスの生産は既存のメキシコ・エルモシージョ工場に移管されるそうです。
フォードのマーク・フィールズCEOは、メキシコ新工場をキャンセル理由を「北米における小型車需要の急激な低下」だとしていますが、それに加えて「トランプ大統領の経済政策」も、決断の要因に挙げています。
ドナルド・トランプ大統領は経済政策として、以前から米国の産業保護や成長促進のための減税やインフラ投資(公共事業)を掲げていました。
トランプ新政権の政策が実現されれば米国での事業環境が好転すると、フォード社は期待しているようです。
ミシガン州の工場に7億ドルを投資
メキシコの新工場をキャンセルしたことで浮いたお金は、ミシガン州・フラットロックの既存工場を拡張するために使われます。
投資額はおよそ7億ドル(約827億円)で、航続距離300マイルの新型EVを始めとする、電動パワートレインを搭載したモデルの生産ラインが新たに追加される見通しです。
新型EVはコンパクトSUVタイプになると見られており、アメリカだけでなくヨーロッパやアジアにも輸出されます。
新型EVは2020年までには登場する予定です。
また、マスタング・ハイブリッドや、ピックアップトラックのF-150・ハイブリッドなども、拡張後のフラットロック工場で生産されます。
現在のフラットロック工場では3500名が働いていますが、7億ドルの投資により、新たに700名が雇用されるそうです。
GMを脅すトランプ
2017年1月3日、ドナルド・トランプ大統領はツイッター上でゼネラル・モーターズ(GM)を手厳しく批判しました。
関税がかからないのは、自由貿易協定のNAFTAがあるためです。
トランプ大統領にとっては、そんなもの関係ないのでしょうけど。
しかしGM側は、メキシコで生産されているのはクルーズ・ハッチバックのみで、しかもアメリカへの輸入台数は、アメリカにおけるクルーズの販売台数からするとわずかなもの(190,000台中の、メキシコ生産分は2,400台)だと反論しています。
メキシコではクルーズ・セダンも生産していますが、こちらはグローバル戦略車としてアメリカ以外に輸出されており、アメリカには入ってきていないそうです。
アメリカで販売されているクルーズ・セダンは、全車オハイオ州で生産されています。
トヨタにも圧力が
トヨタもメキシコ・バハに新工場を建設中なのですが、この10億ドルをかけた新工場にトランプ大統領が噛みつきました。
トヨタもフォードのように膝を屈することになるのでしょうか、豊田章男社長の正念場ですね。
トランプの矛盾
近年、メキシコからアメリカへと移住する人は減り始めています。
メキシコが経済成長し、豊かになりつつあるためです。
メキシコの急激な経済成長を支えているのは、外資です。
巨大市場であるアメリカに隣接する国でありながら人件費の安いメキシコは、製造業が工場を建設するのにうってつけであり、日系企業も多数進出しています。
トランプ大統領は「メキシコからの不法移民を防ぐため、国境に壁を建設する。費用はメキシコに出させる」などと豪語していましたが、メキシコからの不法移民を防ぎたいなら、メキシコの経済成長を支援したほうが手っ取り早く、費用もかからない(それどころか米国企業が利益を上げる)はずです。
にも関わらず米国資本のメキシコ進出を阻むのは、トランプ大統領の掲げる政策に矛盾があるからに他なりません。
モノの輸入は労働力(ヒト)を別の形で輸入しているのと同じなので、モノの輸入を阻めば、豊かな国へのヒトの流入(つまり移民)は止まりません。
巨額の関税をかければ、密輸が横行するようになるでしょう。
たばこ税の増税によって、日本でも闇タバコの流通が増えているくらいですから。
不法移民や産業の流出といった問題を解決するには、国際的な経済格差を是正するしかありません。
国際的な経済格差があるかぎり、豊かな国に流入してくるモノやヒトの流れを止めることはできないでしょう。
誰だって、今より幸せになりたいと思っているのですから。
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