WRC 2017年車両規定のマシンが走り始めた!
380馬力のWRカーはグループBの再来か
参戦マニュファクチャラー各社の17年規定マシンが、相次いでテストを開始しました。ある1社を除いては、ですが……。
トップ画像の出典: tumbnation.com
目次
WRC 2017年車両規定の特徴
パワーアップ
近年のWRCでは、コストダウンや安全性の確保といった目的のために、WRカーの最高出力を300馬力程度に制限してきました。
しかし500馬力のモンスターだったグループBラリーカーと比較すると、最近のWRカーは明らかに迫力が不足しています。その点がWRC人気低迷の一因とみなされ、パワーアップが図られることになりました。
2016年までのWRカーは、33φのリストリクターの装着を義務付けられています。2017年からはこれが36φに拡大されるため、80psの馬力向上が見込まれています。300→380psとなるわけです。
ワイドボディ化
かつてのグループBラリーカーは、ちりとりみたいなフロントバンパーや、冗談かと思うほど巨大なリアスポイラー、そして大きく張り出したオーバーフェンダーが装備され、ベースモデルからかけ離れた異様な姿でした。
2017年規定のWRカーは全幅が55mm拡大されるため、グループBラリーカーのような迫力ある造形に生まれ変わります。
ダウンフォースの増大
リアウィングが大きくなり、より大きなダウンフォースを得られるようになります。
もちろんリアのダウンフォースだけを増やしたのではアンダーステアが酷くなるだけですから、フロントのダウンフォースも高めなくてはなりません。幸いにも車体がワイドになったので、フロントのダウンフォースも以前よりは増やしやすいはずです。
軽量化
最低重量が1200kgから1175kgに軽減されます。パワーアップと相まって、パワーウエイトレシオは4.00kg/psから3.09kg/psになるわけですから、もはやクラス違いの車といっても過言ではありません。
パワーウエイトレシオの改善によって加速性能が良くなるだけでなく、軽量化とワイドボディ化による相乗効果で、コーナリングスピードも飛躍的に向上するでしょう。
VW ポロ WRC 2017
フランスでのターマックテスト。ヤリ-マティ・ラトバラのドライブです。
こちらもターマックテスト。ドライバーはセバスチャン・オジェ。
ターマックでは、やはりオジェの方が無駄が無くスムーズなドライビングですね。サーキット用のレーシングカーみたいなポロWRC’17の動きは、ダウンフォースの大きさを物語っています。2017年も大本命でしょう。
シトロエン C3 WRC 2017
C3WRCのグラベルテスト映像。ドライバーはクリス・ミークです。
コーナリング時のアンダーステア傾向はまったくありません。にもかかわらずトラクションのかかりも良さそうで、低速コーナーからの立ち上がりはまるでロケットのようです。
シトロエンは2016年のWRCにワークスエントリーせず、2017年規定マシンの開発に集中しています。また2連覇中のWTCCプログラムを、2016年限りで打ち切る決定を下し、2017年以降はWRCにリソースを集中させる方針です。
VWとトヨタを相手に勝負に打って出たシトロエンですが、映像を見るかぎり、フランスメーカーの戦略は功を奏しつつあるようです。
トヨタ ヤリス WRC 2017
トヨタは本拠地フィンランドでテストを行っています。ドライバーは不明です。
以前のTMG版ヤリスWRCは白一色でしたが、映像のものはカモフラージュが施されています。おそらくトミ・マキネン・レーシング主導で作り直されたのが、映像のヤリスWRCなのでしょう。
映像が直線区間を映したものばかりなので、コーナリング性能を推し量る手がかりがありません。でもジャンプ後の着地姿勢は非常に安定しているので、サスペンションの完成度はかなり高いと思われます。
ヒュンダイ i20 WRC 2017
2017年にエントリーする予定のマニュファクチャラーの中で、ヒュンダイの17年仕様WRカーだけは、まだ映像が公開されていません。おそらくは開発が遅れているためだと思われます。
ヒュンダイは2016年に新車を投入した唯一のマニュファクチャラーです。つまり2015年の後半に、たった1年間しか使えないマシンを開発していたということになります。
他のマニュファクチャラーは、同じ時期に2017年規定のマシンを開発していました。だからこそ早々に実走行テストを始められたわけです。
ヒュンダイとしては2016年にタイトルを取るつもりだったのでしょう。けれど新車のi20 WRC’16は、開発をすでに終了しているポロWRCのパフォーマンスに劣っています。シトロエンとは対照的に、ヒュンダイの戦略は失敗だった可能性が高いです。
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