ル・マン24時間レース 決勝のみどころ

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いよいよ2016年のル・マン24時間レース決勝です。雨に祟られた予選はポルシェ勢が1-2を独占しましたが、決勝は予選のようにはいかないでしょう。それでもトヨタのル・マン制覇は難しいと思いますが……。

トップ画像の出典: lemans.org


目次

  1. LMP1 トヨタの初優勝なるか
  2. LMP2 大混戦! どこが勝ってもおかしくない
  3. GTE-Pro フォードvsフェラーリの構図再び
  4. GTE-AM 日本人の優勝も?
  5. 観戦のお供に スポッターガイド

LMP1 トヨタの初優勝なるか


画像の出典: car.watch.impress.co.jp


トヨタはフロントロウこそポルシェに明け渡したものの、昨年のように絶望的な差はありません。展開次第ではスパ6時間のようにポルシェに先行することも可能でしょう。

しかしプラクティスや予選を見るかぎり、純粋なスピードではやはりポルシェの方が上です。何事も無くレースが単調に進んだ場合には、トヨタがポルシェを上回るのは難しいと思います。

トヨタの不安材料は、新車であるTS050の信頼性でしょう。前戦のスパ6時間では、ポルシェのトラブルに乗じてリードを奪ったにもかかわらず、5号車はエンジンから白煙を上げ後退、表彰台圏内だった6号車も、電気系のトラブルでチャンスをふいにしてしまいました。

3台目を投入しないトヨタ

2014年のWECでは、TS040が「ドミネーター」と呼ばれるほどの圧倒的な速さを誇っていました。そしてWECのシリーズチャンピオンを獲得しましたが、ル・マンでは勝てませんでした。1台はトラブルでリタイアし、もう1台はアクシデントに巻き込まれたからです。

長丁場のル・マンでは、思わぬトラブルが出ることも珍しくありません。LMPとGTが交錯しヒヤリとするシーンなどは日常茶飯事です。

それらのリスクをヘッジするには、エントリー台数を増やすしかありません。生き残る確率を少しでも引き上げるためです。だから耐久王ポルシェも、それに次ぐ勝利数を誇るアウディも、ル・マンだけは3台目をエントリーさせてきます。でも未勝利のトヨタは、頑なに2台体制のままです。

トヨタは今年のル・マンに臨むにあたり「トヨタよ、敗者のままでいいのか。」という自虐的なキャッチコピーを掲げています。ところがトヨタはそもそもベストを尽くしていない=3台目を出していないのです。キャッチコピーがどこか空々しく聞こえるのは筆者だけでしょうか。

今年はVWの排ガス不正の煽りを受け、同じグループに属するポルシェとアウディが体制を縮小、2台エントリーとなっています。トヨタは大チャンスなのですが、やはり3台目の投入はありませんでした。ル・マンで前戦スパの再現をやらかしたら、悔やんでも悔やみきれない敗北となるでしょう。

追記

残り3分までトップを走っていましたが、やはり勝てませんでした……。

トヨタはなぜル・マン24時間レースで勝てないのか?

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LMP2 大混戦! どこが勝ってもおかしくない


画像の出典: car.watch.impress.co.jp


ポールポジションは#26 G-Drive Racingが獲得しました。このチームのオペレーションは強豪JOTAスポーツなので、順当な結果といえます。

意外だったのは2番手につけた#35 Baxi DC Racing Alpineですね。ドライバーとしても名を連ねるデヴィッド・チャン(中国系アメリカ人)氏のチームなのですが、アクション・スターのジャッキー・チェン氏が出資していることでも有名です。#35はお金持ち向け道楽チームかと思いきや、意外と実力派なのかもしれません。マシンの中身はOreca 05です。

昨年のル・マンでLMP2クラスを制した#47 KCMGは、松田次生選手を擁しての参戦となりました。ところが松田選手が担当した予選3回目は豪雨となり、実力を発揮できぬままセッション終了、決勝はクラス9番手からのスタートとなってしまいました。フリープラクティスではトップタイムを出していたので、巻き返しに期待したいところです。

平川亮選手の乗る#46 thiriet by TDS Racingは、予選7番手。ル・マン初挑戦の平川選手にとっては、まずは完走することが目標となるでしょう。とはいえ強豪チームからの参戦ですから、完走しさえすれば結果はついてくるはずです。


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GTE-Pro フォードvsフェラーリの構図再び

60年代はフェラーリとフォードが、ル・マンで熾烈な争いを繰り広げていました。今年のGTE-Proクラスは、そんな旧き良き時代を彷彿とさせる構図になっています。ポールポジションは#68 Ford Chip Gannassi Team USAが獲得しました。


画像の出典: endurance-info.com


復活したフォードGTはかなりの速さで、フェラーリ勢は苦戦を強いられているようです。フォードGTは市販車とレーシングカーの開発を並行して進めていたらしく、ユノディエールの最高速を伸ばすために、市販車の前面投影面積を小さく設計したということです。詳しくは世良耕太氏のブログをご覧ください


画像の出典: endurance-info.com


フォードはインディカーやNASCARでおなじみのチップ・ガナッシ・レーシングとジョイントし、4台ものフォードGTを送り込んできました。マシンが速いうえに盤石の布陣ですから、「フォードの表彰台独占もあり得るな」と思っていたのですが、なんとレーススタートまで24時間を切った時点で、急遽BOPの変更が行われたのです

これによりフォードGTはブーストダウンに加え、最低重量を予選時+10kgの1248kgに。フェラーリ488GTEは最低重量を+14kgの1268kgに変更されました。BOP変更の目的は、アストンマーチンやシボレー・コルベットとの性能差を縮めるためだとされています。

ちなみにアストンとコルベットはリストリクターが+0.2mmと拡大され、コルベットは燃料タンクも+2Lの95Lに増量、ポルシェの燃料タンクも+3Lの98Lとなるそうです。

フォードGTとポルシェやアストンは予選タイムで4秒近い差があったので、この調整だけで順位が入れ替わるとは思いませんが、フォードGTは直線の伸びが武器だけに、ブーストダウンでどのくらい戦闘力が失われるのか注目したいところです。

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GTE-Am 日本人の優勝も?

GTE-Amクラスのポールポジションは、#61 Clearwater Racingが獲得しました。澤圭太選手が所属するシンガポールのチームですね。チームメイトはジェントルマンドライバーのWeng Sun Mok氏と、マクラーレンGTワークスドライバーのロブ・ベル選手です。


画像の出典: lemans.org


とはいえGTE-Amクラスは強敵ぞろいなので、#61だけが優勝候補ではありません。とくに予選2番手の#98 ASTON MARTIN RACINGは、ペドロ・ラミー(元F1ドライバー)とマティアス・ラウダ(ニキ・ラウダの息子)という豪華なプロドライバー2人に加え、ジェントルマンドライバーのポール・ダラ・ラナ氏がプロ並に速いので、ラインナップに隙がありません。要注目です。


画像の出典: car.watch.impress.co.jp


個性的なスポンサーたち

GTE-Amクラスのマシンを見ていると、個性的なスポンサーロゴが目につきます。たとえば#50 LARBRE COMPETITIONには、銀座まるかんのロゴが貼られています。


画像の出典: lemans.org


ドライバーの山岸大(かつてイカ娘フェラーリでGT300を戦っていた)選手の持ち込みだと思いますが、インパクト抜群ですよね。#50はクラス7番手からのスタートです。

個人的に応援しているのは、#99 ASTON MARTIN RACINGですね。このマシンについているBEECHDEENというスポンサーは、イギリスのアイスクリームメーカーです。創業者であるアンドリュー・ハワード氏がステアリングを握ります。


画像の出典: endurance-info.com


BEECHDEENはイギリスGT選手権の強豪チームで、2015年もタイトルを獲得しています。だがル・マンでは勝手が違うのか、予選最下位に沈んでしまいました。決勝ではいつもの速さを見せてもらいたいですね。

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観戦のお供に スポッターガイド

スポッターガイドには参戦するレーシングカーのカラーリングとカーNo.に加え、ドライバー名もまとめられています。以下のリンクからダウンロードしてください。

2016年ル・マン24時間レース スポッターガイド

決勝レースのスタートは、日本時間6月18日22時です。

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最後まで読んでいただきありがとうございます。以下の記事もぜひご覧ください。

トヨタはなぜル・マン24時間レースで勝てないのか?