テスラは”電気じかけの帝国”を築けるか?

テクノロジー・業界分析,批評


このところテスラを巡る動きが活発化しています。他社の買収、提携の解消、ライバルたちの包囲網、そしてオートパイロット中の死亡事故など、枚挙に暇がありません。そこで今回は、最近のテスラ周辺の動きをまとめてみました。

トップ画像の出典: netcarshow.com


目次

1.オートパイロット中の死亡事故で新たな事実
1-1.車が暴走した?
2.自動運転関連の技術メーカーとの提携を解消
3.ライバルが仕掛けるEV戦争
3-1.続々登場するライバル
3-2.商用車でもテスラ包囲網
4.太陽光発電ベンチャーを買収
4-1ソーラーシティのビジネスモデル
5.ついにギガファクトリーが稼働開始! しかし……

オートパイロット中の死亡事故で新たな事実

以前フロリダ州で起きたモデルSの死亡事故について、米運輸安全委員会(NTSB)の調査により新事実が判明したのです。

まず、事故時にオートパイロットが使用されていたか否かについてですが、オートパイロット使用中の事故だったと断定されました。

オートパイロット使用中に起きたとされる事故は他にも2件発生(いずれもドライバーは無事だった)していますが、こちらはテスラ社側が「走行ログによればオートパイロットは使われていなかった」と反論しています。

もしテスラ社側の主張が事実ならば、フロリダ州の死亡事故だけが、オートパイロット中に発生した唯一の事故となります。

車が暴走した?

フロリダ州の事故で判明したもう一つの新事実は、事故当時モデルSは、法定速度以上の速度で走行していたということです。

事故現場となった高速道路の法定速度は65マイル(104km/h)なのですが、モデルSは、74マイル(118.4km/h)で走行していたといいます。つまりオートパイロットが速度違反していたのです。

NTSBはスピード超過が事故の一因となった可能性もあるとして、引き続き調査を進めています。最終的な調査報告書が完成するまでには1年ほどかかるそうです。

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自動運転関連の技術メーカーとの提携を解消

Mobileeye社は、テスラ社に単眼センサーを供給している会社です。オートパイロットの死亡事故発生時には、「モデルSは全方向を監視していない」とのコメントを出していました。

しかしテスラ社は「2016年1月以降に生産されたモデルSのセンサーは、独自技術を取り入れたカスタム仕様だ」と反論。双方の意見が対立する事態となっていました。

Mobileeye社はテスラ社との関係を継続するつもりだったようですが、テスラ社側にそのつもりは無かったようです。テスラ社のイーロン・マスクCEOは、「提携解消は不可避」との見解を示しています。

Mobileeye社の提供している単眼センサーと同種のものを作るのは、さほど難しくないようです。しかしモデルXの3列目シートに不具合が起きた際にも、テスラはサプライヤー側に責任を押し付けるような形でリコール費用の負担をさせています。

企業文化のせいなのか、テスラ社はサプライヤーとの協業体制を上手く構築できないようです。パナソニックが同じような憂き目に遭わなければよいのですが。

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ライバルが仕掛けるEV戦争

モデル3が40万台もの予約受注を集めたことで、EVに対する自動車業界の見方は一変しました。それまではキワモノ的扱いでしたが、儲かるカテゴリーだと認識されたのです。

続々登場するライバル

2018年に発売される新型日産リーフは、モデル3と同等の航続距離(320km)での登場が確定的ですし、シボレー・BOLT EVは、モデル3に先行して発売されますヒュンダイ・アイオニック エレクトリックは航続距離でこそ劣るものの、装備やデザインの面で優れています

商用車でもテスラ包囲網

先日テスラ社は「マスタープラン・パート2」を発表しました。そこには消費者向けのコンパクトSUVやピックアップトラックの計画だけでなく、大型バスや大型トラックの構想も語られています。つまるところ商用車市場への参入計画です。

しかし他社の動きは素早く、すでにEVの大型トラックを開発している企業が複数存在します。ひとつはニコラ、もうひとつはメルセデス・ベンツです。ニコラ社のトラック「ニコラ・ワン」については、以前記事にしたのでそちらをご覧ください

メルセデス・ベンツは、航続距離200kmの「アーバンeトラック」を発表しました。


画像の出典: sankeibiz.jp


航続距離だけ見ると大したことないように思えますが、2〜3時間の充電で200km走行できるというのは驚異的です。

普通のディーゼルトラックからアーバンeトラックに置き換えるだけで、1万kmあたりの運行費用を1000ユーロ削減できるとメルセデス・ベンツは主張しています。

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太陽光発電ベンチャーを買収

テスラ社は2016年6月に、太陽光発電導入サービスの企業「ソーラーシティ」を買収すると発表しました。ですがこの発表の直後、テスラ社の株価は10%も下落したのです。

理由は簡単、ソーラーシティ社が赤字企業だからです。最近のソーラーシティ社は毎年数百万ドルの損失を垂れ流し、ここ5年間の累積赤字は15億ドルにも達していたのですから、市場の反応は当然といえるでしょう。

ソーラーシティのビジネスモデル


ソーラーシティ社は、「第三者所有モデル(Third-Party Ownership, 以下、TPO)」を導入した先駆けです。

消費者が太陽光発電パネルを所有する「オーナーモデル」だと、導入費用はすべて消費者負担となります。このイニシャルコストの高さがネックとなって、太陽光発電はなかなか普及せずにいました。

TPOはデベロッパー(ソーラーシティ社)が太陽光発電パネルを購入し、消費者の家の屋根にパネルを設置、発電した電力を消費者に販売します。消費者は自宅の屋根を提供するだけで、電力を安く供給してもらえるのです。修理やメンテナンスのコストも、すべてデベロッパー負担となります。

テスラ社は自社の家庭用蓄電池システム「パワーウォール」と、ソーラーシティ社のサービスを組み合わせることにより、バッテリーと発電システムを統合し、サービスの一元化を図る考えです。

しかしソーラーシティ社が赤字なのは、そもそも売電価格が安すぎるためなのですから、サービスを一元化したところで、収益体質を強化できるとは思えません。

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ついにギガファクトリーが稼働開始! しかし……

さまざまな要因で株価が下落しているテスラ社ですが、朗報もあります。パナソニックと共同出資でネバダの砂漠に建設中だった「ギガファクトリー」が、まだ計画の14%しか完成していないとはいえ、ついに稼働を始めたのです。


画像の出典: tesla.com


50億ドル($1=¥105で5250億円)もの巨額を投じたバッテリープラントは、約0.93平方キロメートル(愛知県の篠島と同じくらい)もの広さを誇ります。完成すれば1年間に150ギガワットアワー(GWh)分のバッテリーを生産できる生産力は、もちろん世界一です。

ちなみに150GWhの電力とは、ニューヨーク市の年間電力使用量(52GWh)の約3倍にも及ぶとか。

しかし原料となるリチウムの需給が逼迫しているなど、テスラ社の苦難はまだまだ続きそうです。

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参考サイト

最後まで読んでいただきありがとうございます。以下の記事もぜひご覧ください。