SUPER GT 2016 第5戦 富士決勝 トラブル続発!富士にもマモノ!?
予選ではRC FがQ1でほぼ全滅するという波乱がありましたが、それは彼らが硬めのタイヤを選んでいたためでもあります。なので決勝ではレクサス勢の巻き返しが期待されていました。
トップ画像の出典: supergt.net
目次
レース序盤
注意: 文章中の周回数表記は、GT500トップ車両の周回数です。
気温33℃、路面温度49℃と、昨日に引き続きタイヤにシビアなコンディションの中、決勝レースのスタートが切られました。
GT500
GT500のスタートでは、#1 MOTUL AUTECH GT-Rのロニー・クインタレッリ選手がやや出遅れましたが、なんとか3位を死守。#12 CALSONIC IMPUL GT-R、#46 S Road CRAFTSPORTS GT-R、#1の順に、1コーナーをクリアしていきます。
6周目、#8 ARTA NSX CONCEPT-GTの松浦孝亮選手は、#36 au TOM’S RC Fのニック・キャシディ選手のインを1コーナーで突き、そのままオーバーテイク。NSXはGT-Rにこそ及ばないものの、RC Fに対しては優位に立っているようでした。
そのNSX勢が不運に見舞われます。#15 ドラゴ モデューロ NSXの武藤英紀選手が、GT300の#360 RUNUP Group&DOES GT-Rと接触。左リアサスペンションを痛めガレージに戻ると、そのままリタイアに追い込まれたのです。
しかしNSXの勢いは止まりません。9周目の1コーナーでは#17 KEIHIN NSX CONCEPT-GTの小暮卓史選手が、#1にアウトから並びかけます。オーバーテイクにこそ至らなかったものの、ウェイトハンデ84kgの#1は明らかに劣勢です。
10周目、#37 KeePer TOM’S RC Fのリアウイングがストレートで脱落。ダウンフォースを失った車は1コーナーで止まりきれず、グラベル(未舗装部分)に飛び出してしまいます。
ちなみにリアウイングは空高く舞い上がり、グッドスマイルレーシングのブーム(インパクトレンチに空気を供給するためのホースを吊るしてある部分)に落下したそうです。怪我人がいなかったのが不幸中の幸いでした。
この周には#24 フォーラムエンジニアリング ADVAN GT-Rもエンジントラブルでピットイン。修復し一度は走りだしたものの、結局リタイアを決断しています。
3番手争いは、#1と#17のバトルに#100 RAYBRIG NSX CONCEPT-GTの山本尚貴選手が加わって三つ巴となり、俄然熱を帯びてきました。
GT300
GT300もスタート直後の順位変動こそありませんでしたが、3周目のホームストレートで6位#31 apr PRIUSの嵯峨宏紀選手が、5位#4 グッドスマイル 初音ミク AMGの片岡龍也選手をあっさりとオーバーテイク。ハイブリッドはちょっと速すぎますね。
3周目のダンロップコーナーでは、#61 SUBARU BRZ R&D SPORTの井口卓人選手が、#51 JMS LM Corsa 488 GT3の都筑晶裕選手を、アウトから豪快に抜き去って3番手浮上。直線の遅いBRZですが、ブレーキングとコーナリングではFIA-GT3勢に負けていません。
GT300のトップは、「15秒のマージンがあれば(燃費が悪いM6でも)逃げ切れる」とコメントしていた#55 ARTA BMW M6 GT3の高木真一選手でしたが、2位の#21 Hitotsuyama Audi R8 LMSの藤井誠暢選手を振り切ることができず、15秒どころか、1秒以内のデッドヒートになっていました。
その#21が14周目の1コーナーで仕掛けますが、ここは#55が上手くディフェンスします。しかしペース的には明らかに#21が速く、オーバーテイクは時間の問題かと思われました。
ところが、ここで好バトルに水を差すセーフティーカー(以下、SC)が導入されてしまいます。#22 RQ’s SLS AMG GT3の和田久選手が、#9 GULF NAC Porsche 911の阪口良平選手に追突し、コース上にボンネットを脱落させてしまったからです。
#22の和田久選手は、前戦SUGOでもGT500のトップ車両と接触しています。GTアソシエーションはモラルハザードを適用すべきではないでしょうか。
レース中盤
19周目に導入されたSCランは予想外に長引き、ようやくリスタートとなったのは25周目でした。
GT500
リスタートした周のダンロップコーナーで、#100が#17をオーバーテイク。順位を4位に上げます。
#17は27周目に#36にも抜かれ6位転落。しかし#17は追いすがり、#36に食らいついていきます。
#36と#17のバトルは双方がピットに入り、それぞれ伊藤大輔選手、塚越広大選手にドライバーを交代して仕切り直しに。しかしタイヤが温まりきっていない#36は#17の猛攻をしのぎきれず、33周目の1コーナーで5位の座を明け渡してしまいました。
勢いに乗る#17は、やはりタイヤの温まっていない#1の松田次生選手を35周目にオーバーテイクし、4位に。
レース半ばとなってもNSX勢は好調を維持していましたが、トップの#12と競り合えるほどのペースはありません。#12を追撃できるのは、実質的に#46のみでした。しかし本山哲選手から千代勝正選手に交代してわずか3周後に、#46は1コーナーで大クラッシュを喫してしまいます。
幸い千代選手に大きな怪我はありませんでした。原因はブレーキトラブルだったようです。
#19 WedsSport ADVAN RC Fの関口雄飛選手と#6 WAKO’S 4CR RC Fの大嶋和也選手の数周にわたるバトルは、41周目の1コーナーで#6に軍配が上がりました。でも前戦SUGOでサーキットを沸かせた2人が、9位争いをしているのは悲しいですね。
GT300
#31は28周目にピットインしましたが、再スタートできず万事休す。最終的には16周遅れになってしまいました。
GT300トップの#55は33周目にピットへ。小林崇志選手にドライバー交代し、懸念材料の給油が終わるのを待ちますが、意外にも36.6秒の早さで作業を終えます。ちなみに今回から給油リストリクターが狭められたJAF-GT300の#61は、ピットで40.0秒を要していました。
そのため#21のリチャード・ライアン選手とのギャップを広げた状態で、#55はコースに復帰。M6にとって鬼門の給油を無事クリアすることができました。
ピットで左2輪のみを交換し、この時点で実質3位にジャンプアップしていた#65 LEON CVSTOS AMGの蒲生尚弥選手ですが、#61の山内英輝選手に、プリウスコーナーの侵入でアウトから抜かれてしまいました。
レース終盤
路面温度は48℃とほぼ変わらず。SC解除直後にピットインを済ませた車が多く、そのためにほとんどのチームが後半にロングスティントを強いられています。タイヤマネジメントがいつも以上に重要な局面です。
GT500
47周目になると#100と#17のギャップが縮まり、NSX同士のバトル勃発となりました。このバトルは51周目に#17の勝利で幕を下ろしましたが、#100の伊沢拓也選手のディフェンスの巧みさには、多くのGTファンが舌を巻いたことでしょう。
53周目になると、2位の#17と3位の#100に、#1が追いつきました。レース終盤でタイヤが厳しい状況にもかかわらず、ウェイトハンデ84kgの#1が2台のNSXよりも速いという、にわかには信じられない光景が展開されたのです。
結局#1はオーバーテイクできなかったものの、NISMOチームの底力を見た気がします。#1の松田選手によると、交代した直後にはシフトトラブルが出ていたとか。途中で直ったとのことですが、もしそれが無ければ表彰台に乗っていたかもしれません。
結局GT500は#12がぶっちぎりの優勝。第2戦富士での悪夢を払拭しました。これでGT-Rは開幕4連勝です。
GT300
好バトル連発のGT500でしたが、GT300の名手も負けていません。#4の谷口信輝選手は、#65とサイドバイサイドのバトルを演じた末にオーバーテイク。5位に順位を戻します。
素晴らしいバトルを見せてくれた#65ですが、59周目にスローダウン。ピットに戻るとガレージに入ってしまいました。
これで6位に上ったのが#3 B-MAX NDDP GT-Rのヤン・マーテンボロー選手。チャンピオンを狙う#3にとって、貴重な+1ポイントとなりました。
トップを独走していた#55ですが、#21にじりじりと差を詰められ、残り3周となったところで差が1秒を切ってしまいます。
両者の争いはファイナルラップのフィニッシュラインまでもつれこみましたが、コンマ1秒差で#55が逃げ切りに成功。ARTAはBMW M6でうれしい初勝利となりました。
ちなみに#88 マネパ ランボルギーニ GT3の織戸学選手と#4の4位争いは、わずか0.006秒差で#88が4位の座を死守しました。
次戦は鈴鹿1000km
GT500は次こそ「ストップ・ザ・GT-R」となるのでしょうか、それともGT-Rに破竹の5連勝を許してしまうのでしょうか。
GT300は鈴鹿を得意とするBRZの今季初優勝が見られるかもしれません。8月27〜28日の鈴鹿1000kmに注目です。
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