レーシングカー「NSX GT3」の60%は市販車NSXと共通
期待のニューマシン、ホンダ・NSX GT3が、先日のデイトナ24時間レースにおいて実戦デビューを果たしました。
雨が振りウェットコンディションとなった夜間には1-2体制を構築するなど、ハンドリング面でのポテンシャルの高さを見せつける場面もありましたが、2台のNSXは最終的には5位とリタイアという結果に終わっています。
初戦で5位入賞は上出来だと思っていたのですが、NSX GT3のオペレーション担当であるマイケル・シャンク・レーシングのインタビュー内容を読んだら、上出来どころかとんでもない快挙であることが判明しました。
NSX GT3のパーツの約60%は、市販車のものがそのまま使われているというのです。
今回はNSX GT3の秘密に迫ります。
画像の出典: automobilemag.com
NSX GT3と市販NSXの違い
まず外装が異なります。
市販車のボディワークはアルミニウム製ですが、NSX GT3の外装はカーボンファイバー製です。
市販車に対し400kg以上も軽量化された車重は、およそ1315kgにまで落とされています。※1
また、エアロパーツも変更されていますね。
市販車のエアロはそれほど派手なものではありませんが、GT3仕様は巨大なリアウィングやアンダーパネルなどにより、450kg以上のダウンフォースを得ています。
ドライバーズエイドの操作ダイヤルやパドルシフター、発進用のハンドクラッチなどが組み込まれたGT3用ステアリングホイールの価格は3万ドル!($1=¥110換算で、330万円)
ステアリングだけでホンダ・オデッセイが買えてしまいますね。
ちなみにGT3は4WDが許可されていないため、NSXの前輪モーターは除去されています。
エアコンのコンプレッサーも搭載されているようですが、デイトナでは結局使われませんでした。
※1 FIAのバランス・オブ・パフォーマンス(BoP)によると、NSX GT3の車両重量は1250kgとなっているが、米国・IMSAのGTDクラスでは異なるのかもしれない。
NSX GT3と市販NSXの共通点
しかし冒頭に書いたように、NSX GT3の60%は市販車のままです。
代表的なのはエンジンとターボですね。
どちらも市販車の生産ラインから抜き取ったものをそのまま使用しているそうです。
エンジンマウントを増やし、冷却能力をアップするなどの改良は施されているそうですが、それだけで24時間レースを走りきれてしまうのですから、NSXのV6ターボエンジンの信頼性は非常に高いと言えます。
また、ステアリングラックも市販車そのままだそうです。
レース用に開発していたステアリングラックにトラブルが出たために、市販車のものに戻したのだとか。
デイトナでNSX GT3のステアリングにトラブルは出なかったので、市販車のステアリングラックはそれだけ耐久性に優れていたのでしょう。
NSX GT3の底知れぬポテンシャル
FIA-GT3は「市販車ベース」という建前で運営されていますが、最近の車両は反則的な改造を施されたものばかりです。
例えば「レクサスRC F GT3」や「BMW M6 GT3」は、フレームをカットしてありますし、RC Fにいたってはインボードサスに変更されています。
ボディパネルを一皮むけば、市販車の面影なんか微塵もないような車ばかりなのです。
しかしNSX GT3は車両の60%が市販車のままであり、今時にしては珍しく、レギュレーションの精神を忠実に守っています。
にも関わらずデイトナでは一時1-2体制を構築していましたし、インフィールドでは切れ味鋭いコーナリングを見せていました。
逆に言うとNSX GT3には、開発の余地が大きく残されているわけで、来年以降のモデル(ホモロゲがあるので今季は開発凍結)で性能が大幅に向上する可能性が高いです。
今後のNSX GT3には、かなり期待できると思いますよ。
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