リバティ・メディアのF1改革狂想曲 自動車メーカーは賛否両論

F1,モータースポーツ

リバティ・メディアがF1を買収してからというもの、彼らは矢継ぎ早にF1改革案を打ち出しています。
しかし新オーナーの改革案に対して、自動車メーカー側は賛否両論です。

今回はフェラーリフォード、そしてフォルクスワーゲン・アウディ・グループ(VAG)の、F1新政権に対する反応を見ていきます。

画像の出典: f1today.net


F1改革案に対するフェラーリの反応

リバティ・メディアは現在の分配金(主に放映権料)システムは不公平だとして、より平等な分配をすべきだと主張しています。
分配金の傾斜配分がF1チーム間の格差を拡大させた結果、コース上での競争が減少し、F1人気の低迷につながったと考えているからです。

一方、フェラーリは長年参戦してきた功績を認められ、分配金の面では優遇されています。
いわば既得権者ですから、当初はリバティの改革案に難色を示していました。

ところがリバティ側は、リバティ・メディア社の株式1900万株を、F1チームに特別価格で譲ると言い出したのです。
既得権を持つF1上位チームを説得するための懐柔策ですね。

リバティ・メディア株の保有者となれば、F1全体が盛り上がりによって利益を得られます。
たとえ自チームが負けたとしてもです。
そうなると分配金の配分を平等にして、接戦を演出した方が得策になるわけですね。

フェラーリのセルジオ・マルキオンネ会長(兼フィアット・クライスラーCEO)は、リバティ・メディア社の株式取得に興味を示しました

しかし、コンコルド協定が2020年までであること、そして2020年以降のF1の姿について現在のところ何のビジョンも無いことを理由に、慎重な姿勢を崩していません。

リバティ側からすると、F1改革案への自動車メーカー側の支持を取り付けることで、2020年以降のエンジンレギュレーション策定をスムーズに進めたいとの思惑があるのですが、フェラーリ側からすると、「フェラーリに有利なエンジンレギュレーション」にしたいわけです。

よって「F1改革案への支持」と「将来のエンジンレギュレーション策定」との間で、いつものように政治的な駆け引きが繰り広げられることでしょう。
オーナーが変わっても、結局お馴染みの光景が繰り返されるわけです。
でもバーニー・エクレストンがいないのですから、交渉は難航すると思います。

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F1改革案に対するフォードの反応

リバティ・メディアは2020年以降のエンジンレギュレーションを、現在F1に参戦していない自動車メーカーにとっても魅力的なものとし、参戦メーカーを増やしたいと考えています。

しかしいかなるエンジンレギュレーションであろうと、フォードはF1に復帰するつもりはないようです。
フォードは2004年にジョーダン・チームにエンジンを供給したのを最後に、F1からは離れています。

フォードが問題視しているのは、F1の高コスト体質です。

また、モータースポーツから市販車へのフィードバックを重視しているため、WECのGTEクラスやWRCなどに注力したいと考えているのだとか。
フォードは現在の取り組みに満足しており、F1には戻らないとハッキリ答えています。

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F1改革案に対するVW・アウディグループの反応

ディーゼルエンジンの排ガス不正が発覚する直前までは、レッドブルと組んでF1に参戦するとまことしやかに囁かれていたVWですが、昨年限りでWRCから撤退、今シーズンはワールドラリークロスやTCRシリーズでのカスタマーサポートなど、モータースポーツへの投資を大幅に縮小しました。

また、同じグループのアウディも、昨シーズン限りでWECから撤退し、FIA-GT3マシン「アウディR8」のカスタマーサポートと、DTMのみに活動を絞り込みました。

しかしグループ企業の1つ「ベントレー」は、リバティのF1改革案を好感し、F1参戦を検討し始めたと言われています。

1年前、ベントレーとブガッティのCEOを兼任するウォルフガング・デュラハイマー氏は、F1レギュレーションの透明性とスポーツガバナンスの欠如を声高に批判し、F1参戦など考えていないとコメントしていました。
デュラハイマー氏は、F1批判の急先鋒だったわけですね。

ところがそんなデュラハイマー氏が、先日ドイツメディアから発せられたF1参戦の可否を問う質問に対し、明確に否定しなかったのです。

「私から見ると、現在、その話題(F1参戦)の全体が再検討されています。」と、デュラハイマー氏。「それを新しい始まりだと認識するなら、その後はもちろん、以前の決定を試験し、再評価しなければなりません」

2020年以降に、ベントレーがF1に参戦する可能性は十分にあると言えるでしょう。
「エンジンレギュレーションによっては」という、但し書き付きですが。

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