スバルがBTCCでドライバーズタイトルを獲得! アシュリー・サットンがチャンピオンに!
ブリティッシュ・ツーリングカー・チャンピオンシップ(BTCC)において、スバル・レヴォーグGTを駆るアシュリー・サットンが、ドライバーズタイトルを獲得しました!
スバルにとってもサットンにとっても、これが初めてのBTCCタイトルとなります。
しかもサットンは、BTCC史上最年少チャンピオン(23歳での戴冠。誕生からの日数では2番目に早い)というオマケ付きです。
今回は、今季のBTCCにおけるスバルとサットンの戦いぶりを振り返ります。
2017年10月3日追記
ツイッターで「ステーションワゴンとしても初のタイトルなのでは?」というご指摘を受けたので、調べてみたのですが、どうやらそのとおりのようです。
50〜60年代のチャンピオンマシンについては車名しかわからないので、確実なことは言えない(同一の車名でも、ボディタイプが複数あるため)のですが、おそらくステーションワゴンで参戦したのは「ボルボ850エステート」「シビックツアラー」「レヴォーグGT」の3台だけで、前の2台はタイトルを獲得していませんから、レヴォーグがBTCCを制覇した初のステーションワゴンということになると思います。
シーズン序盤戦
開幕戦ブランズハッチ・インディ(ラウンド1・2・3)
開幕戦のブランズハッチ・インディでは、スバル勢は散々な結果でした。
とくにジェイソン・プレイト(スバル)は、ラウンド2(BTCCは1つのサーキットで3レースを行う)のスタート直後に大クラッシュを喫し、ラウンド3はスタートすらできなかったほどです。
ちなみにスバルの最上位は、そのプレイトがラウンド1で記録した12位だったと言えば、どれだけスバルが酷かったかわかるでしょう。
4台エントリーでその有様なのですから最悪です。
一方、ラウンド1で優勝したトム・イングラム(トヨタ)は、ラウンド2も3位で終えるなど、好調な滑り出しを見せました。
そのイングラムに加え、ラウンド3で2位表彰台を獲得したコリン・ターキントン(BMW)、そしてディフェンディング・チャンピオンであるゴードン・シェデン(ホンダ)などが、スバルとサットンのライバルとして立ちはだかることになります。
第2戦 ドニントンパーク(ラウンド4・5・6)
予選ではサットンのレヴォーグにオーバーブーストのレギュレーション違反が発覚し、予選結果から排除されるという事態に。
そのせいか、ラウンド4は13位がやっとでした。
一方、イングラムとターキントンは好調を維持しており、イングラムはラウンド5(ラウンド数は開幕戦からの通算で表記)で早くもシーズン2勝目をあげています。
しかしサットンもラウンド5では後方からしぶとく追い上げて3位に入り、今季初表彰台を獲得しました。
ラウンド6でも、サットンがレインコンディションの中で素晴らしい走りを披露し、連続で3位になっています。
ちなみにラウンド6で優勝したのは、ライバルのターキントンでした。
第3戦 スラクストン(ラウンド7・8・9)
第3戦のスラクストンは、ホンダとBMWの独擅場でした。
サットンも果敢に抵抗を試みますが、結果は6・8・6位と振るわず。
BTCCはイベントの3ラウンド目(スラクストンならラウンド9)がリバースグリッドとなるので、イベントの2ラウンド目で6〜10位に入った選手には大きなチャンスとなるのですが、この時点でのスバルは、それすら活かしきれていなかったのです。
一方、ターキントンはラウンド9で優勝、イングラムもラウンド8・9で表彰台、シェデンはラウンド7・8で2位表彰台と、ライバルたちは着実にポイントを重ねていました。
この時点でのランキングトップはイングラムで、2位はシェデン。
対照的にスバルとサットンはシーズンのスタートダッシュに失敗し、中盤戦からの巻き返しを図ることになってしまいました。
シーズン中盤戦
第4戦 オウルトンパーク(ラウンド10・11・12)
第4戦のオウルトンパークでは、これまでの流れからは一転し、サットンが大活躍しました。
ラウンド10・11・12を、3位・優勝・4位という好成績で終え、タイトル争いに名乗りを上げたのです。
逆にイングラムとターキントンの成績は冴えませんでした。
イングラムは他車に追突されるなど不運が重なり、連続リタイアの憂き目に。
ターキントンはラウンド10と11で不調、ラウンド12ではサットンとテール・トゥー・ノーズの熾烈なバトルを展開したものの、結局オーバーテイクできず5位に終わっています。
ラウンド12ではホンダ勢が1-2フィニッシュを達成し、ディフェンディング・チャンピオンの意地を見せ優勝したゴードン・シェデンが、ランキング首位に浮上しました。
第5戦 クロフト(ラウンド13・14・15)
ここでもサットンとターキントンが、ガチンコのバトルを繰り広げました。
ラウンド13では、ポール・ポジションからスタートしたサットンを、2番グリッドスタートのターキントンが追いかける展開でしたが、サットンが最後まで隙を見せず優勝。
ストレートでもコーナーでも、レヴォーグの速さが際立ったレースでした。
ラウンド14は逆にスタートからターキントンがトップに立ち、そのまま優勝。
サットンはターキントンを追いかけるどころか、ターキントンのチームメイトであるロブ・コラード(BMW)から追いかけ回され、2位を死守するのがやっとでした。
しかしリバースグリッドとなるラウンド15は、サットンのオーバーテイクショーとなりました。
優勝こそ逃したものの、ファイナルラップの最終コーナーでアウトから仕掛けた勇気は賞賛されるべきでしょう。
ターキントンはスタート直後にコース外に押し出されたことが響いたのか、ラウンド15は6位どまりでした。
イングラムはこのクロフト戦でも、8位・リタイア・16位という散々な結果に終わっています。
ラウンド14は多重クラッシュに巻き込まれる形でのリタイアであり、完全にツキに見放されていたようです。
ライバルの苦戦とサットンの大活躍にもかかわらず、シーズンを折り返し時点におけるサットンのランキングは、まだ4位に過ぎませんでした。
1位はゴードン・シェデン(ホンダ)、2位はロブ・コラード(BMW)、3位がコリン・ターキントン(BMW)という順位だったのです。
レヴォーグGTのマシン特性
レヴォーグGTはブレーキングに優位性があるようで、クロフトのようなコンパクトなコースを苦にしないんですよね。
ストレートでは大柄なボディサイズが災いし、いまいちスピードに伸びが無いようですが、他車と比較して大きなレヴォーグが、狭いコースを縦横無尽に駆け巡る姿は、なんだか新鮮ですし、痛快です。
第6戦 スネッタートン(ラウンド16・17・18)
ラウンド16では、ジャック・ゴフ(ホンダ)を豪快にオーバーテイクして優勝!
シェデンやコラードが下位に沈み、ターキントンも7位に終わったため、サットンにとっては会心の勝利となりました。
さらにラウンド17では、サットンがポール・トゥ・ウィン! ターキントンを2位に従えての連勝です。
しかし好事魔多し。
ラウンド18ではサットンが接触から大きく順位を落としたのに対し、シェデンが優勝、コラードが2位、ターキントンが3位と、ライバルたちが上位を独占してしまいました。
これによりシェデンがランキングトップをキープ。
サットンは11ポイント差のランキング2位から、終盤戦に臨むことになりました。
この段階になっても、シーズン序盤の躓きがまだ響いていたのです。
シーズン終盤戦
第7戦 ノックヒル(ラウンド19・20・21)
ラウンド19ではジェイソン・プレイトが今季初優勝。
この勝利の前には、BTCC通算50回目のポール・ポジションという快挙を成し遂げたプレイト。
大ベテランですが、そのスピードはまだまだ健在のようです。
このラウンドではサットンが2位となったため、スバルが1-2フィニッシュを達成しました。
そしてラウンド20では、スタート直後の大クラッシュでスタートがやり直しとなる波乱にも関わらず、今度はサットンが優勝、プレイトが2位。
連続1-2フィニッシュで、ノックヒルの支配者となりました。
しかしラウンド21では、イングラムがタイトル争いに踏みとどまる久々の優勝を果たし、ターキントンもノックヒルの3ラウンドを全て3位でまとめ上げるなど、ライバルたちもサットンに負けていません。
これによりターキントンがランキング首位に。
サットンは4点差で2位のままでした。
これだけ勝ちまくっているのに、なぜかサットンはランキング首位になれなかったのです。
第8戦 ロッキンガム(ラウンド22・23・24)
第8戦は、オーバルコースのインフィールドを利用した、特殊なサーキットであるロッキンガムです。
しかしここでも、スバルの勢いは止まりませんでした。
ラウンド22でサットンのチームメイトであるジェームズ・コールがBTCCキャリア初優勝を達成すると、ラウンド23ではサットンが今季6勝目を上げるなど、手のつけられない強さを発揮。
ラウンド22でスタートできなかったイングラムや、ロッキンガムの3ラウンドの全てでサットンの後塵を拝す形となったターキントンを突き放します。
これでようやくサットンがランキング首位となりました。
ランキング2位のターキントンは、12点差で続いています。
スバルとサットンはシーズン序盤に躓いたせいで、タイトル争いではかなりの苦戦を強いられていたことがわかりますね。
第9戦 シルバーストーン(ラウンド25・26・27)
このままタイトルを決めそうな勢いだったサットンですが、伝統のシルバーストーンで失速してしまいました。
シルバーストーンでは5位・4位・11位と精彩を欠き、最終戦を前に338ポイントまでしか伸ばせなかったのです。
逆にイングラムは優勝・2位・4位と完全に復調しましたが、シルバーストーン終了時点においても271ポイントしかなく、タイトルの可能性は潰えてしまいました。(BTCCは優勝しても20ポイント)
シェデンも272ポイントどまりで、タイトルの防衛は絶望的な状況です。
俄然タイトルの可能性が出てきたのは、ターキントンでした。
328ポイントと、サットンに10ポイント差まで迫った上に、最終戦は昨年連勝を飾ったブランズハッチですから、ポイント差以上に有利な状況と言えたのです。
ただ昨年と異なるのは、ターキントンがスバル・レヴォーグGTではなく、BMW125iに乗っているということでしょう。
第10戦 ブランズハッチ(ラウンド28・29・30)
ところがブランズハッチ最初のラウンド(ラウンド28)は、意外な展開となりました。
ターキントンはペースがまったく上がらず、一度も10位以上のポジションに顔を出せなかったのです。
一方、サットンはイングラムにこそ遅れを取ったものの、3位表彰台を確保し、ターキントンにプレッシャーをかけていきます。
しかしターキントンも食い下がります。ラウンド29では15番グリッドから奇跡の優勝!
タイトル獲得に望みをつなぐ勝利に加え、ファステストラップのボーナスポイントにより、ターキントンはサットンとのポイント差を、わずか6点にまで縮めることに成功しました。
対照的にサットンは12位に終わってしまい、リバースグリッドの恩恵も受けられない状態に陥ってしまいます。
スバルとサットンはターキントンを追い詰めるどころか、逆に追い詰められてしまったのです。
決着
ですが決着はあっけないものでした。
最終ラウンド30で、ターキントンは接触により右リアサスペンションを破損。
早々にリタイアしてしまったのです。
サットンは雨中のレースを堅実に走りきり、3位表彰台でシーズンを締めくくるとともに、BTCC史上最年少の23歳でチャンピオンを獲得しました。
誕生から8660日でのタイトル獲得は、1966年のジョン・フィッツパトリック(8514日で戴冠)に次ぐ2番目となります。
そしてサットンは、スバルにもっとも伝統のあるツーリングカーレースでのタイトルをもたらしてくれたのです。
最後まで読んでいただきありがとうございます。以下の関連記事もぜひご覧ください。
レヴォーグがBTCCに参戦すると聞いたときには、耳を疑いました。
「ボルボ850エステート」という、悪しき前例があったからです。
そのためレヴォーグが勝てるとは思わず、以下のリンク先の記事を書いたのですが……予想は見事に外れてしまいました。外れて良かったですけどね。
ステーションワゴンやSUVでのレース出場はオススメできない | 車知楽