SUPER GT 2016 第2戦富士決勝 衝撃の結末……
こんなに荒れた富士も久しぶり
いろいろなことがありすぎたレースなので、スタートから順を追ってまとめていきたいと思います。記事中の周回数表記は、GT500クラスのトップが何周目だったかを表しています。
トップ画像の出典: supergt.net
目次
序盤 500と300の静と動
予報にあった強風も吹かず、好天に恵まれた第2戦決勝ですが、路面温度は40℃と、予選時より13℃も高く、タイヤライフへの影響が懸念される状況でのスタートとなりました。
GT500の上位陣はスタート直後の1コーナーをグリッド順に通過し、その後もつかず離れずの距離感で、順位の変動なく周回を重ねていきます。
GT300は1周目から火花散るバトル
対照的にGT300では、序盤から激しいバトルが展開されました。スタート直後の1コーナーこそグリッド順通りにクリアしたものの、2番手スタートの#25 ViVaC 86MCはペースが上がらず後退し、代わって2番手になったのは#7 Studie BMW M6 GT3でした。
これで1位は#55 ARTA BMW M6、2位は#7と、BMW M6が1-2体制となりましたが、9周目に#31 TOYOTA apr Priusが#7をオーバーテイク。BMWの牙城は早くも崩壊します。
しかし#55は圧倒的な速さで#31を寄せ付けません。#25も10周目を迎えるころには13番手まで後退しており、序盤戦におけるFIA-GT3勢の優位は明らかでした。
中盤① ZENTとDENSOの獅子奮迅
トムスとルマンという主力が後方グリッドからのスタートとなったレクサス勢の中で、上位を狙えそうなのは#38 ZENT CERUMO RC Fと#39 DENSO KOBELCO SARD RC Fの2台だけでした。
しかし#39は硬めのブリヂストンタイヤをチョイスしているらしく、5番手のポジションで上位陣についていくのが精一杯という感じ。レクサス勢の希望は#38に託されます。
ところが15周目の最終コーナー、#38は#1 MOTUL AUTECH GT-Rにインを突かれて4位に転落。レクサス勢としては悪夢のGT-R1-2-3体制となってしまいました。
しかし#38の立川祐路選手は17周目の1コーナーで#1を抜き返します。
#38はその勢いのまま、今度は2番手の#46 S Road CRAFTSPORTS GT-Rに接近。後方では#1を#39が追い立てるなど、レクサス勢が調子を上げているのは明白でした。
そして27周目には#38が#46を、31周目には#39が#1をそれぞれオーバーテイクし、GT-R勢に割って入ることに成功します。
トップの#12 CALSONIC IMPUL GT-Rは2位に10秒以上の差をつけての独走状態でしたが、レクサス勢にもわずかながらチャンスが出てきたところで、1回目のピットが始まったのです。
中盤② 各車分かれたピット戦略
110周のレースを3スティント(つまり2回のピットストップ)で均等割りすると、1スティントは36〜37周になります。しかし#46 S Roadは32周、#38 ZENTは33周でピットインする作戦を取りました。第1スティントをショートスティントにしたわけです。
#38は柔らかめのタイヤだったため、短めのスティントにせざるを得なかったとのこと。おそらく#46も似たような理由だと思います。路面温度の高さがボディブローのように、各車のタイヤを傷めつけていたのです。
一方、#12 CALSONICは38周、#1 MOTULにいたっては40周目まで引っ張り、後半のピット戦略に幅を持たせた状態でコースに復帰しました。
やっちゃえ千代さん
ピットアウトした#46の千代勝正選手は、すぐさま2番手#38の石浦宏明選手を捉えると、テールトゥノーズに持ち込みます。そして43周目のコカ・コーラコーナーでアウトから豪快にオーバーテイク! 開幕戦の活躍がフロックでないことを証明して見せました。
その後千代選手は首位#12の安田裕信選手とのタイム差をジワジワと削っていき、最大で13秒あった差を7秒まで縮めることに成功します。安泰かに思われた#12の地位も、同じGT-Rが相手では、決して盤石ではなかったのです。
BMW M6 GT3の弱点
GT300クラスで首位を独走していた#55 ARTAのM6は、2位に大差をつけた状態でピットに入りましたが、全車が1回目のピットを終えたときには、#3 B-MAX NDDP GT-Rにトップの座を明け渡していました。
首位陥落の原因は、BMW M6 GT3の燃費の悪さです。#55のピットでの停止時間は1分6秒と、#3より14秒も遅かったのです。
中盤③ 運命のセーフティーカー
レースが動いたのは72周目でした。#100 RAYBRIG NSXの左リアタイヤが100R出口でバーストし、カウルの破片がコース上に散乱、セーフティーカーが導入となったためです。
普通なら絶好のピットタイミングなのですが、セーフティーカーラン中はピットレーンがクローズされるルールに変更されたため、コース上の安全が確保されるまでは、全車スロー走行を続けなければなりません。
このルール変更の煽りを食ったのが#46 S Roadでした。1回目のピットストップが32周目だった#46にはもう燃料が残っておらず、SCラン中の75周目にペナルティ覚悟のピットインを強いられます。
#46は90秒のペナルティストップを課され万事休す。好走むなしく優勝争いから脱落してしまいました。
33周目に1回目のピットストップを終えていた#38 ZENTも、セーフティーカー導入でピットタイミングを狂わされたチームでした。しかし#38は、なんとかSCランをしのぎ切ります。
78周目にリスタートが切られたとき、#38はすぐにピットインするだろうと誰もが思っていました。ところが#38はピットレーンへは向かわず、#12 CALSONICに続いて1コーナーに突入していったのです。
ガソリンは足りるのか? と思った矢先、#38は失速。案の定ガス欠です。石浦選手はパワーダウンしたマシンをなんとかプリウスコーナーの先まで持ってきましたが、そこで力尽きてしまいました。
車を下りた石浦選手が怒り心頭。それもそのはず、燃料不足を知らせるランプは、まだ点いていなかったのですから。しかも#46とは異なり、#38はペナルティなしでピットインするチャンスがあったのですからやりきれません。なんとも後味の悪い結果となってしまいました。
終盤 最後に泣く者、笑う者
80周目にラストピットを終えた首位の#12 CALSONICですが、82周目にピットインした2位#1 MOTULに先行を許してしまいます。#1の停止時間はわずか38.5秒で、#12より6秒も早かったからです。
しかし#1はハンデ40kg、#12はハンデ12kgですから、ペースは#12が上です。96周目には1コーナーで#12が#1のインを突き、接触寸前のサイドバイサイドからコカ・コーラコーナーでオーバーテイク、青いGT-Rが再び首位に立ちます。
ViVaCの奇策
#25 ViVaC 86MCは、1回目のピットストップを49周目まで引っ張った上、2回目のピットではタイヤ無交換作戦を敢行し、一気に2位にまで躍進しました。
その後#55 ARTAに抜かれてしまいますが、松井孝充選手が周回を重ねたタイヤをケアしつつ順位をキープし、見事3位表彰台を獲得。直線が遅いJAF勢でありながら、戦略の妙で富士の表彰台に上ったのは流石です。
忘れ物を取り戻したB-MAX
昨年は快走しながらもタイヤバーストで2位に終わった#3 B-MAXは、星野一樹選手とヤン・マーデンボロー選手の2人が会心の走りを披露。#55 ARTAを寄せ付けず、「今季のGT-R GT3は不利」との下馬評を覆して優勝しました。
激走実らず……
#12 CALSONICは首位に出たものの、#1 MOTULを引き離すことはできず、1秒前後の間隔のまま周回を重ねていきます。
しかし次第に#12のスライド量が増え始めます。ブレーキング時にリアタイヤから上がる白煙は、#12の異常事態を示す狼煙のようです。
ハンデ40kgの#1の方がタイヤに厳しいはずですが、#12の異変を察知したのか、#1がスパートを開始。残り6周の時点で2台のギャップは1秒を切っていました。
いよいよ最後のバトルが始まるかと思われた106周目、勝負はあっけない幕切れを迎えます。100Rで#12の左リアタイヤがバースト、ランオフエリアに車を止めてしまったのです。
がっくりとうなだれるJ.P.デ・オリベイラ選手の姿は、レースの残酷さを表現して余りあるものでした。優勝した#1 MOTULのロニー・クインタレッリ選手と松田次生選手も、#12のあまりの不運ぶりに喜ぶこともできず、困惑した表情を浮かべていたほどです。
終わってみればレクサスデー?
GT500は優勝こそGT-Rでしたが、2〜5位をRC Fが占める結果となりました。とくにトムスは#37 KeePer TOM’S RC Fと#36 au TOM’S RC Fが、それぞれ予選9・13番手から3・4位に入るという離れ業をやってのけました。強豪チームはタダでは転ばないということでしょうか。
落日のブリヂストンタイヤ
かつて最強を誇ったブリヂストンも、いまではミシュランに次ぐ2番手タイヤというイメージが定着しつつあります。#100と#12を襲ったタイヤバーストは、ブリヂストンの凋落を示す典型例でしょう。ミシュランが日産の2台以外にも供給しない限り、GT-R1強体制は崩れないと思います。
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