燃料電池車はEVよりもエネルギー効率が悪い! トヨタ・ホンダに大打撃か?
燃料電池自動車(FCEV)といえば、ゼロ・エミッションを実現する次世代の自動車として、トヨタやホンダが開発を進めているものです。
しかし水素生産などの工程までを含めたFCEVのエネルギー効率は、実はそれほど高くないという調査結果が出てしまいました。
FCEVよりも、BEV(Battery EVの略。普通の電気自動車のこと)の方が、はるかに効率的だというのです。
今回はFCEVの非効率な部分に関する解説と、世界におけるEV・PHV人気の高まり、そしてFCEVに社運を賭けてしまったトヨタ・ホンダが、次に打つべき一手についてお伝えします。
燃料電池車はエネルギー効率が悪い
Transport&EnvironmentというヨーロッパのNGOが行った調査によると、燃料電池車(FCEV)よりも電気自動車(Battery EV, BEV)の方が、トータルで見ると効率的なのだそうです。
この調査では車単体の効率を比較するのではなく、電気や燃料の製造段階を含めたエネルギー効率を比べています。
FCEVの効率を悪化させているのは、水素を取り出すための水蒸気改質や、エネルギーの輸送・貯蔵のコスト(高圧で水素を貯蔵すると発熱するので、事前に冷却しなければならない)、そして水素から電気を取り出す際のロスなどです。
BEVも、2度のAC/DC変換や充電の際のロスなどがあるものの、FCEVほど効率は悪くありません。
エネルギーを作り出してから走行し終えるまでのトータルで見ると、BEVのエネルギー効率が73%なのに対し、FCEVは22%でしかないそうです。
ちなみに内燃機関のみを有する自動車の場合は、たったの13%となっています。
FCEVにはインフラ整備の不足という大問題もありますし、そのうえ効率も悪いとなれば、FCEVを開発する意味がありません。
トヨタやホンダの戦略は、失敗に終わる可能性が高くなってきました。
人気はEVやPHV
EVやPHVの販売台数はうなぎのぼり
一方、BEVやPHVは、世界的に販売台数を伸ばしています。
世界におけるEVの販売台数は、昨年だけで40%も増えました。
PHVも人気です。
アメリカでは、プリウス・プライム(日本名・プリウスPHV)が、先行していたシボレー・Voltに追いつこうとしています。
プリウスファミリーの中でも、プリウス・プライムのシェアが20%を超えてきており、ハイブリッドよりもPHVという流れに傾きつつあるのです。
「プラグイン・ヴィークル(BEVとPHVを合わせたカテゴリー。コンセントをつなげる車)」の世界販売台数は、8月だけで103,000台を記録しました。
これは前年同月比+64%という驚異的な伸びです。
このままいけば、2025年までにイラン1国の年間総生産量に等しい石油需要が世界から失われると言われるほど、EVやPHVの需要は高まっています。
EVで出遅れたトヨタ・ホンダ
にも関わらず、トヨタとホンダはEVやPHVの分野で出遅れています。
ハイブリッドでの蓄積があるので、技術的には問題無く作れると思うのですが、なぜか腰が重いのです。
経営スピードの遅さは日本企業の弱点として度々指摘されていますが、トヨタ・ホンダにも当てはまるのかもしれません。
起死回生の一手はあるのか
トヨタやホンダに、劣勢を覆す方法はあるのでしょうか?
トヨタやホンダが現在取り組んでいるものを、以下にまとめてみます。
全固体電池
トヨタが開発中の全固体電池は、EVの問題点をほぼ全て克服できる、非常に優れた技術です。
しかし今すぐ投入できるものではありません。
また、トヨタの後を追うように、ポルシェも全固体電池を開発しています。
全固体電池に関する詳しい解説は、以下のリンク先をご覧ください。
ポルシェも全固体電池を開発中! EV版911に搭載予定 | 車知楽
REレンジエクステンダー
EVの航続距離を伸ばす解決策のひとつとして、内燃機関をレンジエクステンダーとして搭載する方法もあります。
軽量・ハイパワーなロータリーエンジン(RE)をレンジエクステンダーとして使用すれば、重量の増加を最小限に抑えられることでしょう。
マツダは以前からREレンジエクステンダーを開発しており、トヨタがマツダと提携したのはこれが目的だと主張するジャーナリストもいますが、筆者はレンジエクステンダーは無用の長物だと思っています。
テスラ・モデル3や日産・新型リーフが証明したように、リチウムイオンバッテリーであっても、日常的な使用に耐えるだけの航続距離を、すでに実現しているからです。
その証拠に、BMW i3のBEVとレンジエクステンダーEVの販売比率は、初期こそレンジエクステンダーEVが上回っていたものの、マイナーチェンジでBEVの航続距離が伸びた途端、それが逆転してしまいました。
今後バッテリーの技術開発が進めば、航続距離は徐々に増えていくでしょうから、レンジエクステンダーEVをビジネス的にスケールさせるのは難しいと思います。
単一車種でEV・PHV・FCEVをマルチに展開
ホンダはクラリティという単一の車種で、EV・PHV・FCEVの3種類をマルチ展開してます。
ヒュンダイもアイオニックで、ハイブリッド、PHV、EVのマルチ展開をしているので、ホンダはそれを真似たのかもしれません。
単一車種で複数のパワートレインを展開すれば、たしかにコストダウンにはなるでしょう。
しかしアイオニックEVの航続距離がイマイチであることからもわかるように、マルチ展開でパッケージングの問題を克服するのは困難です。
とくにFCEVは、燃料電池スタックや水素タンクが巨大なので、EVやPHVと共通の車台では、室内が狭くなるなどの弊害の方が大きくなると思います。
「PHVのSUV」を作るのが最も確実な方法
トヨタとホンダがプラグイン・ヴィークルカテゴリーにおける劣勢を覆すには、奇策を弄するよりも、PHVのSUVを作るのが最も確実でしょう。
ボルボなどは、それで着実にPHVの売上を伸ばしています。
SUVは室内スペースが広く、パッケージングしやすい車ですし、世界的に人気が高いボディタイプだからです。
CR-VやRAV4などにプラグインハイブリッドのグレードを追加するだけで、かなりの販売台数を稼ぐことが可能でしょう。
それによってバッテリーやモーターのコストを引き下げることもできるはずです。
プラグインハイブリッドだと価格が高くなりすぎるというなら、レクサスやアキュラといった高級車ブランドで出せばいいわけですし、やらない手は無いと思うのですが……ともかく日本企業は動きが遅いですね。
指をくわえて見ていても、他メーカーが急成長しているPHVやEVの市場シェアを奪っていくだけです。
参考サイト
Efficiency Compared: Battery-Electric 73%, Hydrogen 22%, ICE 13% | insideevs.com
Nearly 103,000 Plug-In EVs Sold Worldwide In August, Toyota Prius Prime On Top | insideevs.com
Electric Cars Will Cut Oil Demand Equal To Iran’s Output by 2025 | carscoops.com
疑問だらけのトヨタ・ミライ クラウン並みの大きさなのに4人乗り&車内狭い謎 | biz-journal.jp
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